5月の梅雨 卯の花くたしと若葉台風


今日から3-4日は、京都も梅雨のような天気が続きます。この時期の長雨を「卯の花くたし」と呼びます。また、台風1号が季節外れに日本に接近中。昔読んだ本の筆者が、この時期にやってくる台風のことを「若葉台風」と呼んでいたことを思い出しました。
天気図を見ると梅雨と変わりません。テレビの予報士も「梅雨前線」という言葉を使っています。それは「災害」をにおわせるためにあえて使っているのだと思います。実際、「台風+前線=大雨」と言うように、油断せず雨の降り方には十分注意する必要があります。特に12日は台風崩れの熱帯低気圧の影響もあって、梅雨真っ盛りでもかなりきつい湿った空気が入り、危険度も高いです。
「梅雨と変わらない天気図ならば、なぜ梅雨入りさせないのだろう?」と思う方もいるでしょう。しかし、まず間違いなく気象台は梅雨入りさせません。そう言い切れるのは、前線は停滞せずにまた南へ下がっていき、週末からしばらくは初夏の陽気が戻る予想だからです。
自然に対して人間が境目を付ける行為が梅雨入り・梅雨明け宣言。しかも近畿や東海のように地域ごとにです。気象予報士になって天気を知れば知るほど、それは純気象学的ではなく意図的なもので、その意図的な情報の意味と価値について考えてしまいます。夏明け、秋入り、冬入りなどが発表されないのはなぜか?結局は「何月何日から」と、季節に明確に境目を付けることが難しいからなのでしょう。
もちろん梅雨の宣言には情報的価値があるからこそこれまで長く続いてきているわけですが、私は「二十四節気」のように緩やかに捉えるのが季節と言うものではなかろうかと、歳を重ねるたびに強く思うようになりました。
さて「卯の花くたし」とは、この時期に咲く「卯の花」を腐らせてしまうような長雨のこと。「くたす」とは腐らせるの意味です。卯の花は「ウツギ(空木)」とも呼び、独特の香りのする白い花です。関東にいた時には街路樹としてよく香りがしましたが、京都市街地ではほとんど感じることはありません。昔は万葉集にも多く歌われた花です。季節の変わり目に咲く花として、今の世にも名前を知られています。京都では、植物園や京都御苑・二条城庭園内でも見ることができるようです。
季節外れにやってきた若葉台風は、季節の壁を乗り越えて日本に届く前に、まだ冷たい海水によって急速に衰えて行く予報です。ただ、腐っても台風。風は弱まっても、湿った熱帯の空気を運んできます。最新の雨の情報にはご注意ください。

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