疫神社の夏越祭 2011年 祇園祭


今日31日は祇園祭夏越(なごし)祭で、疫神社で茅の輪くぐりが行われました。1カ月続いた祇園祭もこれで全てが終了します。

蘇民将来と祇園祭

疫(えき・えやみ)神社は八坂神社の西門を入ってすぐの場所で、前を通ったことのある方はたくさんおられると思いますが、実際に参拝されたことのある人は少ないかと思います。ご祭神は蘇民将来(そみんしょうらい)。祇園祭のちまきには必ず付けられている「蘇民将来子孫也(そみんしょうらいのしそんなり)」で知られる、「蘇民将来」という人の名前です。

八坂神社のご祭神・スサノオノミコトは、神仏習合で牛頭天王(ごずてんのう)と同一視されます。ある時、牛頭天王(武塔神)が嫁探しの旅に出た時、一夜の宿を求めます。蘇民将来の弟で裕福だった巨旦将来(こたんしょうらい:人物名)はその申し出を断り、続いて、貧しかった蘇民将来に宿を請うと彼は粟の食事で快くもてなしました。
その後、妻ができたお礼に牛頭天王は自分の子どもたちと供に蘇民将来の家に再び訪れ、返礼として蘇民将来とその家族・子孫に至るまで、腰に茅の輪をつけておけば疫病から免れることを伝えます。牛頭天王は疫病をつかさどっていたのです。やがて疫病が流行り、巨旦将来をはじめ他の者は全滅しますが蘇民将来の家だけは皆無事だったそうです(なお、元の話では牛頭天王は巨旦将来を狙い撃ちで滅ぼしていますが、ここでは一般的な方を)。
祇園祭は疫病を鎮めるために始まったお祭りです。現在でも、疫病をつかさどる牛頭天王=スサノオを鎮め、蘇民将来の子孫との護符を貼ったちまきを戸口に飾ることで、疫病にかからず健康であることを願います。そのお祭りの総決算として、蘇民将来、つまりは私たちの先祖を祀る神社に疫病除けを願うのが京都の風習です。

疫神社の夏越祭

夏越祭では、茅の輪を疫神社に飾り、神饌には蘇民将来が牛頭天王もてなした際に出した「粟」のお餅が献じられます。面白かったのは、パイナップルもあったこと。氏子さんや関係者からの単なる奉納なのか、何か意味があるのか気になります。

今日の夏越祭には祇園祭関係者の方が集まっておられました。中にはお稚児さんらもおり、役目を終えて白塗りではなく普通の姿で参拝されました。やはり役目を終えれば普通の小学生で無邪気な笑顔を見せてくれました。お稚児さんに決まった時から関係者をはじめ大変だったと思いますが、本当にお疲れ様でした。

関係者の参拝の後は一般の参拝です。円山公園の中まで長い行列ができていました。皆さんのお目当ては茅の輪くぐりもありますが、その周りにかけられた「茅(かや)」を持ち帰ることです。茅は丸めるなどして皆さん上手に「茅の輪」をつくっておられました。この作り方は、おそらく代々伝わっていくのでしょう。観光客は茅を頂いても綺麗な「茅の輪」を作るのは初めてではまず不可能です。

今日は日曜日と言うこともあり、夕方4時頃に再び行ってみると、もう何もありませんでした。最後は茅の輪からも茅を抜き取っていくそうで、今日は日曜日ということもあり例年より早く無くなったようです。

私にとっての祇園祭

これで祇園祭の行事は全てが終わりました。今年は大震災もあり、869年の御霊会の時に行われた当時の国の数と同じ66本の鉾建てにちなみ、全国の安寧を祈る祭りでもありました。関係者の皆様は本当にお疲れ様でした。私も様々な災害が収まっていってほしいと切に願います。
私にとって今年の祇園祭は、行事を追いかけ続けたお祭りでした。八坂神社にもずいぶんと足を運び、祭りの中心は山鉾町だけではなく、やはり八坂神社もだと感じました。宵山などには今年で12年連続で行ってきましたが、その他の行事は初めて見るものもあり、写真や動画、何より自身の経験としてたくさんの資料を集めることができました。また、山鉾町の一員として、今年はちまき作りや会所飾りのお手伝いもさせていただきました。

印象的だったのは12日・13日の宵山。以前から好きな夜でしたが、今年は天候にも恵まれ、月の美しさは格別でした。
本当に「百聞は一見に如かず」。今年の経験を来年の案内にも活かしていきます。散策やブログ等でお付き合い頂きました皆様、ありがとうございました。今後とも京都旅屋にご期待下さい。

なお、祇園祭の1カ月の写真をFacebookのページにアップしています。どうぞご覧ください。
祇園祭 2011年 写真集

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として9年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。散策メニューはこちらから
より大きな地図で 八坂神社の疫神社 を表示

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