祇園の八朔


今日から8月。8月1日は「八朔(はっさく)」です。そんな名前の柑橘類がありますが、実は果物のハッサクの由来は、8月1日すなわち「八朔」から食べられたことによるそうです。京都の花街(かがい)ではこの日に、日ごろお世話になっている芸事の先生やお得意先にあいさつ回りをする風習があります。
八朔とは8月の朔日のことで、「朔」は現在でいう「新月」のことです。旧暦は朔日を1日としたため、8月1日は必ず新月(朔日)になります。なお、今年の新月は7月31日でした。
八朔の頃には早稲(わせ)の穂が実るため、農家では無事に実ったことを神に感謝すると同時に、初穂を恩人などに送る風習がありました。そのため、八朔のことを別名「田の実の節(たのみのせつ)」と言い、「田の実」は「頼み」に通じることから商家でも、お得意先に対して引き続きのごひいきと感謝の意味をこめてあいさつ回りをする慣わしができました。
祇園甲部では芸舞妓は正装の黒紋付を着て、界隈のお得意先を回ります。お中元もこの日から始めます。祇園界隈では朝から賑わしく、すごいのがカメラマンの数。知らずに行くと何事かと思うことでしょう。芸舞妓さんを熱心に取っておられる方は多く、そんじょそこらの記者会見をしのぐほどのカメラの数になります。ほとんどが御年配の方で、撮影ポイントをよく知っておられます。
私はのんびりと午後に出かけ、運よく写真を撮ることができましたが、カメラマンの皆様はお得意先からの「出待ち」をされておられました。芸舞妓さんはカメラマンの「こっち向いて」の声に快く応えて笑顔を見せてくれます。

それにしても真夏のこの時期に、正装とは言え日差しの熱を吸収しやすい黒を着られる御苦労は大変だろうなと感じます。場所場所でカメラマンに応えるのも素晴らしいですね。
なお、宮川町では黒紋付ではなく、色とりどりの着物姿であいさつ回りをされます。こちらも華やかです。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として9年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。散策メニューはこちらから

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