目先しばらく雨や曇りの予報が出ています。今までの「夕立型」とは違い、「秋雨前線」が原因で天気が崩れてきます。
真夏は長い「梅雨の中休み」。再び梅雨前線が戻ってくると、それはもう「秋雨前線」となります。同じような気象現象でも呼び名が変わるだけで、ずいぶんと印象が違ってくるものです。前線の北には秋の空気。20日から21日の朝は、今年最初の「秋」に一時的に覆われるかもしれません。
北と南では雨の降り方が違う
意外かもしれませんが日本各地で雨の降り方の常識は異なっています。その理由は日本が沖縄から北海道まで南北に長いため。少し専門的ですが、空気に含むことができる水分は気温が高いほど多くなり、特に25℃を超えると2次曲線のグラフのように急激に増えていきます。夏や熱帯にスコールのような大雨が降るのは、空気中に含むことのできる水分の量が多くなるからです。
つまり、北へ行くほど気温が低くなるので、雨の元になる水蒸気の量が少なくなり、北海道や東北では南ほどの強い雨は通常は降りません。もし九州の雨を北海道や東北の人が見たら、その強さにたいへん驚かれることでしょう。さらに各地域の大雨対策は当然その地域の雨量をもとになされていますので、仮に50mm/hの雨が降ったとすると、九州では何ともないのに北海道では浸水被害が起こってしまいます。それくらい各地の雨の降り方とそれに応じた耐性は異なっていて、この気象条件の違いが日本の中での風土や文化の違いを作っている要因の一つとなっているのでしょう。
梅雨と秋雨でも雨の降り方が違う
また、秋雨と梅雨は似ているようで、雨の降らせ方が違っています。梅雨の時期は西日本で雨量が多くなり、秋雨は東日本で多くなる傾向があります。梅雨は地球規模の西回りの暖気の流れ込みに加え、南の太平洋高気圧が強まることで西日本に向かって暖気が合流する形で起こりますが、秋雨は太平洋高気圧が衰えて反対に北側の高気圧が強まって起こるためです。
高気圧は時計回りに回転していますので、日本の南の高気圧が強まれば、南の海からの膨大な水蒸気は西回りで流れ込んできます。つまり西日本に雨の元がどんどん供給されて、九州などに大雨を降らせます。先日の新潟福島の豪雨は、この西回りの非常に湿った空気が日本海を回りこんで新潟に集中したことも原因の一つです。一方の秋雨は北の高気圧が強まるので、太平洋からの冷たく湿った空気は東回りで流れ込んできます。さらに太平洋高気圧が後退すると、その縁を回る台風は西日本よりも東日本に近づきやすくなることも、雨量が増える要因となっています。
まだまだ大雨の季節は終わっていません。秋雨は南の高気圧の勢力がまだ強い前半ほど、雨量が多くなる傾向があります。災害には十分ご注意ください。
ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として9年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。散策メニューはこちらから。