京都の季節 暑さ寒さも彼岸まで


台風15号は関東から東北方面を進んでいます。京都市内には幸いにも大きな被害はありませんでした。関東や東北では大きな被害が出ないことを願います。

台風と予報技術

台風は関東で記録的な暴風を吹かせています。大雨も凄まじく、今度向かう東北でも被害が心配です。台風の影響は僅かのコースの違いで全く変わります。今回はたまたま京都市内では被害が少なかっただけで、次回はわかりません。台風が近づいてくる際には毎回警戒をしてください。残念ながら、まだまだピンポイントで大きな影響の出る地域を絞れるほどの予報技術は世界のどこを探してもありません。

しかし、室戸台風の頃を思えばいかに幸せなことか。「予報はだんだん上手になりましても、世間様のご要求も上がり、もうすこしうまくやれということになり、結局十分なるご満足を得る時代はほとんど来ないものではないかと思っております。」お天気博士として知られた藤原咲平氏は戦前にそんな予言をされています。「しかし一生懸命で勉強いたしますとだんだん進歩していく行くものと確信しておるのでございます。…そういうふうでありますから、なるべく広く天気予報というものにご同情願います」と藤原氏は続けている。

さて、雨のあがった市内に出かけてみると、あちこちに落ち葉が舞っていました。しかし早速掃除をされている方々がおり、京都の景観をいつも守ってくれている方々には本当に感謝いたします。

彩雲との出逢い

また、鴨川沿いを走っているときに彩雲(錦雲)を見ました。”出そうだな”と思って空を見ていたのが功を奏したかもしれません。彩雲は比較的見られますが、はやり珍しい部類に入る雲。虹色に輝くその姿は、古来から「吉兆」とされてきました。以前ブログに書いたことがありますね。

私が人生で初めてこの雲に出逢ったのは、学生生活も終わりの2月の末。賀茂川の源流にある岩屋山志明院まで自転車で行った帰り、持越峠を越えて真弓を下っているときに山間の狭い空から見かけました。気象予報士になった頃、NHKの連続ドラマで「まんてん」という気象予報士が出てくるドラマが放送されていました。その中で主人公のまんてんがキャスターとしての生中継の最中に「錦雲」を見つけるシーンがありました。まんてんは大喜びで「雲を見るといいことがあるから 空を見てほしい」と視聴者に呼びかけます。それを見ていて、私もいつか自分の目でも見たいものだなと感じたのです。初めて見た虹色の雲は、自転車で”冒険”にやってきた私に見せてくれたご褒美だったのかもしれません。
「まんてん」のドラマはいろいろと思い出深く、ある予報士が普通に雨が降っているのを見て「これは2mm/hの雨」と言っていたシーンでは、新米予報士の私は”そんなことがわかるのか!?”と思ったこともありました。しかし、やがて私にもそれが分かるようになり、自身の成長を感じることになります。他には「低気圧の墓場」のシーンなど、独学で気象を学んだ新米予報士としては勉強になったドラマです。
ちなみに、彩雲は「吉兆」と言われていますが、正直私は思いがけない悲しい目にあったことはあっても、いいことにあった記憶はありません(笑)でも、見られることそのものがラッキーだということなのでしょう。

暑さ寒さも彼岸まで

この時期の台風は秋の空気を呼び込んできます。俗に言う”台風一過の秋晴れ”は、今回はその通りとなってきそうです。ちなみに10月終わりや11月に日本の東を台風が通れば、”西高東低”となって今度は冬の空気を呼んでくることもあります。台風はそれだけ強力に「場」を変える存在。物事が激しく動いている中心にいる人のことを”台風の目”とはよく言ったものです。

21日11時発表の京都の週間予報では、23日・24日の予想最低気温は16℃で、その後も20℃以下の日が並んでいます。今朝の最低気温が約21℃ですので、5℃も気温が下がります。体調を崩さないように十分ご注意ください。しばらく秋の陽気が続いて、散策日和。待ちに待った「京都の季節」がやってきます。どんな猛暑の年もこの時期には決まって涼しくなってきて、自然とはよくできているものだと思わされます。”暑さ寒さも彼岸まで”。気象予報士になってひしひしと感じます。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として9年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。散策メニューはこちらから

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