高瀬川舟まつり 2011年


23日は高瀬川の一之舟入で「高瀬川舟まつり」が行われ、高瀬舟に乗ることができたり、舞妓さんによるお茶の接待がありました。

京都の初しぐれ

22日の話を少し書きます。昨日の「秋」のブログに書き忘れましたが、22日は今シーズン初の「しぐれ」が見られました。京都では秋から冬の風物詩として「北山しぐれ」が有名です。この日、竹田駅で降り立った私にホームから細かい雨が吹きこんできました。「しぐれ」は「時雨」とも書き、雨や雪が降っては止みを繰り返し、晴れたかと思えば曇り、曇ったかと思えば雨(雪)が降り、そしてまた晴れる。そんな現象のことを言います。冬型の気圧配置の時に起こりやすく、京都では地形の関係で移動性高気圧が張り出してくる時期に起こりやすくなります。季節には夏と冬しかないという論調に立てば、この日は始めて「冬」が現れた瞬間。季節の境目は何気ない日の空に現れていて、折に触れるたびに季節の移ろいをしみじみと感じます。ちなみに時雨はよく虹を連れてきてくれます。…このお話もまたどこかで書きましょう。

高瀬川と高瀬舟

さて、今日の本題。23日は風がやや強いものの「しぐれ」は過ぎ去り散策日和。高瀬川の一之舟入では「高瀬川舟まつり」が行われました。この日は年に一度、高瀬舟に乗ることができます。と言っても現在の高瀬川は浅いので舟巡りではなく、常時置かれている見学用の動かない舟に乗れるというものです。

現在の舟は1984年に高瀬川保存会によって造られましたが老朽化が進んでいて、2014年をめどに新調が決まっています。現在の舟は江戸時代の図面を元につくられていますが、新しい舟は白木造りで、江戸後期の「拾遺都名所図会」の図を参考に、現在とは異なって、へさきが大きく上がった形にする予定とのことです。

高瀬川を開削したのは角倉了以(すみのくら りょうい)という江戸初期の豪商で、高瀬川以前には嵐山を流れる大堰川の開削も行っています。高瀬川は当時造られていた方広寺大仏殿の木材を運ぶ目的で開削された川です。総工費は7万5千両。今の価値で約150億円と言われています。それだけのお金を民間で出すのですからすごいものです。現代ならばJR東海がリニアモーターカーを掘るのと似ているでしょうか。

さて、当初は大堰川と同様に鴨川そのものを開削していましたが、鴨川は土砂の積もりが早くすぐに埋まってしまうことから断念をして、新たに高瀬川を掘りました。当時は今の河原町通までは鴨川の河川敷だったので、高瀬川は鴨川の端の方に造られていた運河でした。その終点であり起点であるのが一之舟入。舟入は荷物の上げ下ろしをする場所で、特にここは大きな池のようになっていたと思って下さい。現在も面影は見ることができますが、当時は今よりもさらに大きな船溜(ふなだまり)でした。

高瀬舟は、そんな人工の運河を行き来する舟。もとは美作(みまさか:現在の岡山県)の急流・和気川の舟がルーツだとも言われていて「たかせ舟」の名前はその時から既にあったものだそう。特徴は、底が平らで沈みの少ないことで、急流で底が浅い河川で使われた舟です。高瀬川よりも先に大堰川で使用されていて、その名残が現在の保津川下りと言われています。

高瀬川舟まつり

実際に今の高瀬舟に乗ると、高瀬川の流れが意外と速く感じられました。現在の川の水は「みそそぎ川」から引かれています。なお、みそそぎ川は昭和10年の鴨川水害の後の河川改修に伴って、わざわざ「床」を行うために造られた川。さて、舟は子どもたちに大人気!やはり楽しいですよね。一方で、やはり舟底などには老朽化が見られました。新しい高瀬舟もまた私たちを長く楽しませてくれることでしょう。

付近では、舞妓さんによるお茶席も行われました。舞妓さん関係のイベントは「写真家」の数がものすごいです。その隣では舞踊ショーやチャンバラ教室、劇団による殺陣(たて)の披露なども行われました。加えて、島津創業記念館も無料開放され、中は大変賑わっていました。

また、向かいの和食と寿司のお店「がんこ」二条店にある「高瀬川源流庭園二条苑」は小川治兵衛の手が入った傑作庭園。初めて見た時から私が虜になったお庭で「深山幽谷」という言葉が真っ先に浮かびました。もとは角倉了以の別邸跡で、山形有朋の第二無鄰庵などなどを経て現在の形になっています。みそそぎ川から引かれた高瀬川の流れは速く、岩場と楓の林を流れゆく様子はまさに渓流。京都でこのような「流れる」お庭を見られる場所は少ないです。最近知ったのですが夏には蛍も舞うとのこと。ここは大変ありがたいことに、なんと食事をしなくてもお庭は無料で見せて頂けます。社会貢献の一環とのことですが、本当に頭が下がりますね。ただ、できれば素晴らしいお庭を眺めながらゆっくりと食事をしたい場所です。

この日の写真はFacebookにて公開していますので、ご覧ください

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として9年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。散策メニューはこちらから

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