北野天満宮 お土居の紅葉


12月もすでに一週間以上が経ちました。市内の紅葉も終盤ですが、まだまだ見頃の場所はあります。北野天満宮御土居(おどい)の紅葉もその一つ。

御土居は豊臣秀吉が築いた京都を囲う土塁で、現在は京都の北部を中心にその一部が残されています。創建された時には全長23kmもの大規模なもので、幅も約20m。同じく幅約20mの堀もあっため、「御土居堀」と呼ぶことを推奨される研究者もおられます。現在見られる御土居の中には、近年に土を盛って整形されている個所や、御土居が破壊された後の残土を集めているものもあるようです。なお、京都駅の0番ホームが御土居の上に築かれているとの説もありますが、中村武生氏の著書によると、御土居は一旦削られており、現在の0番ホームは堀跡に土が盛られて築かれたとされています。いずれにしても、かつての洛中と洛外を分ける御土居の跡が今の京都駅だというのは面白い。

北野天満宮境内の御土居は紙屋川(天神川)に沿い、川が堀の役割を果たしていました。ちなみにこの付近の紙屋川は大きく地形をえぐって流れており、市街地には珍しく深い谷を見ることができます。その御土居に現在植えられているのが約250本の楓。本殿近くの入り口から入って御土居へと上ると、目の前には美しい楓の谷が広がります。なお、上った場所にあるケヤキは樹齢600年と看板には記載されており、秀吉が御土居を作った時期(400年前)と合わないのは、やや気になります。

さて、御土居から谷へと降りると現れる美しい朱塗りの橋が鶯橋。春に付近で鶯がさえずるところから命名されたそうです。今年の京阪電車のポスターでは、「おけいはん」がこの鶯橋の上から紅葉を眺めていますね。昨年の泉涌寺の御座所庭園もそうですが、なかなか渋くてしかも紅葉が非常に美しい場所を選んでおられるなぁと個人的には思います。来年も楽しみです。

谷へ下りると、上から見下ろしていたのはまた違った印象を受けることでしょう。こうして二つの景観を楽しむことができるのも、御土居の紅葉の素晴らしいところです。今は一足先に散った楓の葉が川岸を埋め尽くし、茶色にそまった大変風情のある道を散策することができます。8日現在では、樹齢400年を優に超えるとされる「三又の紅葉」はほとんど散っていましたが、僅かとなった残り葉をハラハラと落としている姿が、冬へと向かうはかなさを伝えてくれているようでした。御土居の紅葉は全体的にはもうしばらく楽しめることでしょう。入園料は600円で、公開は12月11日(日)まで。お茶(ほうじ茶)とお菓子も頂くことができます。

また、近くの千本釈迦堂では7日・8日と大根焚きが行われていました。お釈迦様が悟りを開いたのが12月8日とされ、成道会(じょうどうえ)の法要の後、大根を加持祈祷し、輪切りにして大鍋で煮込んで参詣者にふるまいます。中風除け・諸病除けがあるとして、大勢の方々で境内は賑わいます。ただし、大根焚きを頂くのは有料(1000円)ですので、学生などにはややきつい金額かもしれません。実は私は学生時代にこのすぐ近くに住んでおり、テレビで大根焚きが行われていることを知って来てみたのですが、金額を見て断念したことがあります。信心はお金ではないものの、複雑な心境で帰りました。

話がそれましたが、寒くなるこれからの時期に、中風除けの行事は合っているのでしょう。9日・10日は鳴滝の了徳寺でも大根焚きが行われます。ぐっと寒くなりますので、お出かけされる方は温かくしてお出かけ下さい。京都でも初雪の可能性があり、いよいよ、今シーズン初の真冬が訪れます。師走らしい寒さに、京都の雰囲気も年末へと一気に加速していきそうです。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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