27日は知恩院で除夜の鐘の試し撞きが行われました。テレビでも恒例の年末の風物詩です。
知恩院の鐘は、日本三大梵鐘の一つ。残り二つのうち一つは京都にある方広寺の鐘。もう一つは奈良の東大寺です。知恩院の鐘は重さが約70トン、高さは約3.3mもある大きな鐘。江戸時代に作られた当時、その重さのため鐘楼へ吊るすための上部の輪がたびたび壊れて困っていたところ、参拝していた刀匠の正宗・村正兄弟がその話を聞き及んで見事な技術で強度を加えて輪を鋳造し、ようやく吊るすことができたといわれています。また、近年ではアインシュタインが自ら鐘の真下に立って僧に撞かせ、周りが鼓膜が破れないかと心配するのをよそに平然と出てきたそうです。彼は「音がしない位置に立っていた」と語ったそう。実際には鐘の真下は無音にはならずとも、音波が打ち消し合って音は小さくなるそうです。さすが希代の科学者ですね。
さて、知恩院の鐘は一般の方は撞くことはできず、普段も撞かれることはありません。撞かれるのは基本的に4月の御忌大会の時と12月の除夜の鐘の時で、除夜の鐘が最も有名です。この時は17人がかりで鐘をつき、内1人は親綱に仰向けにぶら下がるようにして全体重をかけて鳴らします。残りの16人は、撞く時以外に鐘を撞く木の棒(撞木:しゅもく)が鐘に当たってしまわないように、それぞれが子綱をもってブレーキをかけています。つまり、鐘を撞く時にだけ子綱を緩めねばならず、親綱担当者との息の合った掛け声が重要になるのですね。
「えーいひとつ」「そーれ」の掛け声で撞かれる除夜の鐘の様子は、昨年(2010年)の、NHK「ゆく年くる年」でも放送されました。親綱担当者が撞木の揺れのタイミングを見て「えーいひとつ」と声を出します。また、「そーれ」の声で、すかさず鐘楼の木の枠に登って逆さまに親綱にぶら下がり、体重をかけて思い切り鐘を撞きます。では、大きな音を鳴らしていく様子を動画でご覧ください。
試し撞きでは、1人2回づつ撞いて行きます。初めて親綱を握って撞く僧侶の方もおられ、息が合わずに失敗することもあります。初めての方にとっては大切な予行演習ですね。本番では、独特の雰囲気の中、およそ1分間隔で鐘が撞かれて行きます。ゆく年くる年でおなじみということもあって、例年3万人から5万人の方が訪れます。昨年は鐘楼までの行列が、なんと山門の下まで伸びており、長い待ち時間への覚悟も必要です。行かれる方はトイレを済ませ、防寒対策もしっかりとしておきましょう。また、鐘楼付近は一方通行になりますが、人の圧力がものすごく、満員電車並みです。夜の暗い時間帯でもあるため、お怪我の無いよう十分にお気を付け下さい。
ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。
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