立春 春の気配を感じられる頃


4日は二十四節気の一つ立春です。テレビからは「暦の上では今日から春」という表現を耳にしますが、「立春を過ぎてもまだ寒い」という実感から「春は名のみ」と捉える方もいることでしょう。実は立春は、あくまで「春の気配を感じられる頃」。急に暖かい春がやって来ることはなくても、日常の風景の中に春を探してみると、きっとあちこちにその「兆し」が現れているはずです。まだ寒さの厳しいなかにでも、必ず来たる暖かい春を感じられた時は、実に嬉しく思えることでしょう。

立春は気温の転換点

立春は一年の気温変化においては、大きな転換点です。8月以来下がり続けてきた気温が、6カ月ぶりに上昇し始める重要なポイント。この先8月初めまで、平均気温では右肩上がりでずっと上昇し続けます。夏も近づく八十八夜、台風が来やすいといわれる二百十日も、その起点は立春。また、旧暦の新年は必ず立春の前後にあります。気温が上がりはじめ、生き物が活動を再開する時期を新年にしたのもまた、古人の感性なのでしょうか。

しかし、順調に上がり続けるのは平均気温の世界。現実には、春は一進一退を繰り返し、これから5月頃にかけて、日本付近では寒気vs暖気の激しい戦いが繰り広げられます。そして、両者の血とも汗ともいえるような雨を降らせ、ぶつかり合うたびに風を吹かせ、時には雷や雹といった「流れ弾」まで地上に落としていきます。春といえば穏やかなイメージですが、実は気性の激しい存在。そんな人物も近くにいそうですね(笑)持続性の強い安定した「冬型」が崩れる時は「風雲急を告げる」のです。時代の変わり目にも似ているかもしれません。四季折々の変化は、本当に面白い。願わくば、災害が少なく移り変わって行ってほしいものです。

古今集に「冬ながら 空より花のちりくるは 雲のあなたは 春にやあるらむ」という歌もあります。冬空の下でも、雲から雪の「花」が落ちてくるからには、雲の上はきっと春だろう。なんとも優雅な歌ですね。雪の「花」は白く、そこから白梅を連想させる歌でもあります。古人は、冬の雪を見ても春を考えていました。春先に太平洋側で降る南岸低気による雪は、まさにこれに当てはまっています。立春を過ぎ、目に見えて春を感じられる機会もどんどん増えていくことでしょう。今回も嵐電の動画で、春の気配をお楽しみください。

立春と旧暦のお正月

「立春正月」という言葉があります。吉田神社では立春の前日である節分の頃に「年越し蕎麦」を売るお店も出ており「立春=旧暦のお正月」と認識していおられる方もいるかもしれません。ただ、実際にはほとんどの年で「立春=旧暦のお正月」とはなりません。

旧暦の各月の最初の日は、新月の日です。この時点で、立春が新月に当たる確率がいかに低いかが伝わるでしょうか。また、旧暦には「中気(ちゅうき)」といい、「二十四節気の中から、各月に決まったものを入れる」という法則もあります。二十四節気は年間24回あるので、2回に1回の順で中気となります。旧暦1月の中気は「雨水(うすい)」で、立春はその前の節気。つまり中気ではないのです。ということで「雨水を必ず1月にして、その前の新月の日」が新年1月1日となります。月の満ち欠けは、おおよそ29.5日の周期ですので、立春は旧暦の12月に入ったりあるいは1月に入ったりとなるわけです。この幅は正月をはさんで+-15日になり、時には旧暦の1年の間に2回立春がある(1月と12月に立春が入る)ということも起こります。以上のように、「立春=旧暦の正月」になるのはおよそ30年に一度、ほとんどの場合は「立春=旧暦の正月」ではありません。

また、旧暦の季節の区分も2パターンあります。一つは「暦の上では今日から春」の言葉に代表されるように、立春・立夏などの区分を元に季節を分けるもの。もう一つは、旧暦の1月~3月を春、4月~6月を夏、のように3か月づつで区分する方法。ただし、この方法では年によって季節感がずれてしまいます。ちなみに俳句の季語は、前者の節気の区切りを採用しています。立春以後の寒さは「余寒」と言われます。目先数日は少しだけ春らしいですが、2月も全体的には余寒の厳しい1か月となりそうです。体調にはくれぐれもご注意ください。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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