気象予報士と歩く 京都の災害史


3月11日に、まいまい京都さんの散策で、「気象予報士と歩く 京都の災害史」と題した散策を行わせていただきます。

3月11日は東日本大震災から1年の節目に当たる日です。震災から12日後、津波の被災地を訪れる機会がありました。津波の破壊力は想像以上で、自分にできることは何かを強く考えさせられました。

あの日から1年、京都の災害史の散策をさせていただくことになりました。災害の記憶を追体験することで、「想定外」を少なくする効果があると私は考えています。拙いながらも学んできた知識なりを、できるだけ具体的に分かりやすくお伝えしていくことは、私が出来ることの一つでもあります。京都旅屋としてもこれからの出水期にかけて災害史の散策を実施したいと考えています。地震と違い、水害や台風などは事前にある程度の危険性をお伝えすることができます。参加して頂いたことで、災害は身近な場所でも起こりうることを感じて頂ければと思っています。

気象予報士には、数字を分かりやすく解釈する能力が求められていると私は考えています。例えば、資料を解析して「24時間に500mm」の雨が降るかもしれない、と予想できたとします。しかしこの数字をそのままお伝えしても、多くの方はピンと来ないでしょう。昨年の紀伊半島での豪雨では「総雨量1000mm超」という数字もありました。そのような記憶があると「500mmならば、その半分。たいしたことはないだろう」と思う方さえいるかもしれません。現実には、24時間500mmが京都で降れば、過去130年を超える観測史の中でもダントツの1位で、ほぼ間違いなく鴨川もあふれ、近代にはないほどの大水害が発生します。のような、伝え方をするべきです。

そもそも京都で、そこまでの異常な数字などあり得ないかといえば、実際に2000年の9月11日、名古屋では日降水量428mm、24時間の最大で534mmもの雨量が観測されています。この豪雨が「東海豪雨」。甚大な被害を生じました。名古屋の日降水量の歴代2位は240mmで、同じく京都の現在の歴代1位は288mmです。つまり京都でも同様に、過去の記録を飛びぬけて、500mmものとんでもない雨が降らないとも限らないわけです。京都で最後に大被害を生じたのは、昭和10年の大洪水。その時何が起き、もし今後鴨川が溢れたら何が起こるのか?過去の水害記録なども交えて、散策をしながらお話をしたいと思います。

また、京都は台風被害とも無縁ではありません。昭和9年の室戸台風は、京都の130年を超える観測記録の中で最も強い風を吹かせた台風です。10分間平均の最大風速は28m/sでした。台風の暴風域は25m/s以上で、「強い台風」の基準も凡そ33m/s以上ですので、28m/sは大したことはないように受け取る方もいるかもしれません。が、実際に28m/sの風が吹いた京都では、とんでもないことが起きていました。その、とてつもない光景が写真で残されており、誰もが驚くその光景をご紹介する予定です。また、室戸台風の悲劇の要因の一つには、短い間に急激に風が強まったことがあります。恐るべきその経過がもたらした大参事。現代でも同様な危険がありうることもお話します。

春先に多いのは火事。1788年の天明の大火は、応仁の乱以来の大火といわれるほどに、京都の街を焼き尽くした大火事として知られていますが、その空前の大火が発生したのはちょうど今の暦では3月でした。実は研究によって当時の気圧配置や風向きの経過が概ねわかっています。どのような環境で火事が「大火」へと発展していったのか?

そして地震。京都で最後に大被害を生じた地震は、江戸時代にまでさかのぼります。時代は変わり、京都の街も大いに変わりましたが、当時と変わらない危険も潜んでいます。京都で発生した過去の地震災害の特徴もお話します。最後に、情報を得る方法。地震・水害の防災マップや、鴨川の河川水位のリアルタイム情報、避難情報などのメール配信サービスなどについてもご説明します。以上、重たい話を書きましたが、残されたモニュメントをたどりながら、散策は明るく分かりやすく参りたいと思います。お申し込みは「まいまい京都」さんのホームページにて受付中です。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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