なごり雪降る京都の街かど


厳しい寒の戻りがやって来ました。3月上旬の暖かい日に出すと必ず当たる「この先、寒くなります」の予報は今回も例にもれずですね。しかし、一度暖かさを知ってしまうと、寒の戻りと言うには厳しすぎる寒さ。12日は市内でも雪が舞いました。京都の終雪の平年日は3月20日で、雪もそろそろ最後。まさになごり雪となりました。

専門天気図だけを見ていると、真冬と何ら変わりのない冷たい空気に覆われています。ただ、3月も半ばとなれば日差しの力が強く、天気図のセオリーほどは気温が下がらなくなります。春先の気温予想は、経験が求められる部類に入るでしょう。そもそも気温を当てるにはまず天気を当てなければならず、気温予想は単純な晴れや雨の予想よりも難易度が高い。「予報士が毎日予想を出し続けて一人前になるまで4年かかる」と、今からもう11年前の今頃に見た、気象予報士を紹介する「オトナの試験」という番組内で紹介していたのを思い出します。私が予報士を目指そうとしたのはその番組がきっかけで、次の日にはアバンティの本屋へ行き、「はじめての気象予報士試験」という本を買いました。

話がそれました。2月の雪景色が儚ければ、3月中旬以降の雪は風花(かざはな)として舞うばかりになります。京都市街地では、雪が積もるのはせいぜい3月上旬まで。中旬以降に積もることはまずありません。具体的に記録をひも解いてみると、3月中旬以降で1cm以上の積雪が観測されたの1984年3月22日の6cmが最後。以来27年間観測がないのです。なごり雪は、冬の終わりを告げに来て、まさに花のように舞いながら静かに溶けて行きます。冬の余韻の美しさ、そして春を告げる日差しの輝きに、桜の時期も近いことを感じます。

もう積もらないといわれると、雪景色が好きな方にはがっかりかもしれませんが「舞う」ということならば、まだまだ可能性があります。近年では2010年に極上の舞いが現れました。2010年は桜の開花が早く、3月29日にはほぼ満開。少し早咲きの、円山公園の祇園枝垂れ桜も美しい夜桜を見せてくれてました。

古来、美しいもの例えに「雪月花」があります。冬の雪、秋の月、春の花ですが、この時は円山公園のしだれ桜で、同時に「雪月花」を見ることができました。見えていたのはほんのわずかな時間。雪が舞ってしかも月が見えるという相矛盾した条件をじっと待つのは、なかなか骨が折れたことを思い出します。雪雲の合間から月が姿を現した瞬間の感動は忘れられません。満月前日のほぼまん丸のお月さま。ゆっくりと舞い落ちる雪。最高の夜桜でした。

今朝(12日)の京都の最低気温は0.1℃。先日のブログで、今シーズン最後の氷点下の話を書きましたが、明日(13日)の予想最低気温は-1℃と、氷の張る朝がもう一日増えそうです。京都の結氷の最終日の平年は3月26日。気温は地上1.5mの高さで測っていますので、気温が氷点下に下がるのと氷が張るのとはまた別の話ですが、気温でいえば今シーズン最後の氷点下は明日の可能性が高いでしょう。寒い中起きるのは辛いものですね。しかし、朝の明るさは真冬とは比べようもありません。路面凍結には注意しつつ、冬の名残を楽しみたいものです。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

「なごり雪降る京都の街かど」への2件のフィードバック

  1. 京都もまもなく終雪なのですね。雪月花や夜桜の雪の光景がとても綺麗です冬の雪景色の京都も美しいですが春の桜も楽しみになってきます。

    1. 抹茶さん
      コメントありがとうございます。
      1か月後は、しだれ桜も咲いて
      京都が華やいでいることでしょう。
      このブログでも早咲きの桜から順番に
      お届けできればと思います。

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