京都の金環日食


心配された天気ですが、よい方向に転び、広範囲で美しい金環日食を見ることが出来ました!

日本中が楽しみにしていた日食。雲の合間からなんとか見られたところも多く、本当に良かったです。予報は確率論ですので、発表される天気以外にもいくつかのシナリオがあることがあります。今回はよい方向に動いてくれ、京都でも朝カーテンを開けて嬉しくなりました。ということで、欠け始めの時間から鴨川から京都御苑を散策しましたが、本格的な望遠鏡を構えた方からベンチに座って日食グラスを構える方など皆さん見晴らしの良い場所に集まってきていました。

私の狙いは「木漏れ日の日食」。木漏れ日はピンホールカメラの原理で太陽の形を投影しているため、日食時には木漏れ日も欠けているのです。朝はちょっと太陽高度が低く、地面には綺麗に映らないところも多かったため、スクリーンのように映る壁や塀を探して行きついたのが、御所の東側。狙い通り、高い木が投影した木漏れ日が御所の塀に綺麗に映っていました。その様子は、まさに芸術作品。普段は近づくと警報が鳴ってしまいますが、日食の光はそのセンサーをくぐりぬけ、時々刻々と変化する斬新な水墨画のような絵を、御所の塀をキャンパスにして描いていました。

そして7時30分の日食が最大となる時刻。京都でもギリギリ見られるはずで、木漏れ日もおおよそ金環状態となりました。いや~!感動です!空は青黒くなって、今まで経験したことのない雰囲気です。しかし京都での継続時間はおよそ1分。本当に僅かの時間に感じました。多くの方が目を凝らして空を見つめていたことでしょう。御所の反対側では、大きな段ボールで木漏れ日と同じように投影する「装置」を作って観察している学生を発見しました。映っている太陽を覗かせてもらうと、見事な欠け具合(笑)さすがです!彼らによると金環に見えたとのことでした。

金環日食は終わっても太陽が欠けた状態は続くため、まだまだ多くの方が空を見上げていました。金環日食や皆既日食は月が太陽と地球との間に入って月の影が地球に映ることで起こります。その月の影と地球との間にいるのは気象衛星。私たちの目と同じように見える可視画像では、皆既日食ほどではありませんがうっすらと影が通り過ぎていく様子がわかります。また、月の影によって広範囲が日陰になるため、一時的に気温が下がります。私の手元ではまだ未確認ですが、京都でも0.3℃下がったそうです。

また、京都では金環日食の境目(北限)を完全に見極めるためのプロジェクトがありました。実は太陽の正確な大きさは分かっておらず、金環日食の境目にも諸説ありました。結果は…どうも予想よりは南にあったようです。紫野では綺麗な金環日食の動画も撮影されており、今後の詳細な解析が待たれます。いずれにしても素人が肉眼で金環状態を見極めるにはちょっと厳しかったようで、金環にならなかったとの声も聞かれました。

日食は太陽と月の軌道から計算ができ、平安時代にも陰陽師によってあらかじめ予想されていました。しかし視差補正には苦労をしたようで、今のように百発百中とは行きません。それでも日食が予想されると、とにかく室内に閉じこもって外出を避ける風習がありました。今は当時とは正反対なのが面白いですね(笑)これほどまでに多くの方が空を見上げる機会は日食以外にはありません。美しい日食が見られたことは本当に喜ばしい。子どもたちにとってもきっとずっと記憶に残る出来事になったことでしょう。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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