14日から祇園祭の32基の山鉾がそろい夜店も出て、本格的に宵山が始まりました。
祇園祭の話の前に、またしても九州北部で大雨による被害が発生しました。九州はもともと雨が多い場所で、それに応じた防災力も当然に持っているにも関わらず、これだけの被害が生じてしまいました。梅雨末期には太平洋高気圧が勢力を強め、その縁を回る非常に湿った空気が勢いを持って流れ込みやすく、激しい雨を降らせる元となります。大雨が発生する可能性は、ある程度前の時間や都道府県単位程度の地域で分かるものの、実際に豪雨となる範囲は市町村単位と狭く、直前に雨雲が線状になって来た段階でないと地域を絞って危険を呼びかけるのは難しい。
以下少し専門的な話を書きますが、一番良いのは、各自で気象レーダーを見られるようになることです。気象情報や避難情報は時中になってから出される可能性が高く、いち早く危険を知るには自ら気象レーダーを見て判断できればベスト。激甚な豪雨災害をもたらす危険な雨雲は、1.エコー強度が強い、2.線状に連なる、3.エコーの進行方向と線状の並びが同じである、という特徴があります。今回の豪雨も、こうした雨雲によって引き起こされました。特に重要なのは「3」で、強い雨雲が線状に延びた形でも横切るように動いていれば、一ヶ所に雨が集中することはなく、一過性の強雨で収まります。恐ろしいのはそれが次から次に同じ場所に流れ込むことです。他にも様々なポイントがありますが、ひとまずレーダーを見る際は、真っ赤な色の雨雲の動きに注目してみて下さい。また、川の流れに沿っているかという視点もあるとよいでしょう。直線的な川の流れが雨雲の線の向きと重なってしまうと川が溢れるリスクが高まります。なお、1個所での1回の豪雨は最大でも6時間程。これは豪雨をもたらす雲の集団にも寿命があるためです。
また、人が亡くなるリスクは、川が溢れるだけでは見た目が派手な割に高くありません。命を守る上で恐ろしいのは土砂災害。強い雨が数日続いている場合は、山や崖にはできるだけ近づかないでください。そもそも山や崖の近くに住んでいる場合は難しいところもありますが、避難指示が出た場合には速やかに避難をすることが大切です。山里の場合は、近所ではなく、いっそその地域から遠く離れた場所に避難をするのも一つの選択。一方で、浸水は甚大な経済的被害を生みます。中でも床上浸水と床下浸水には雲泥の差があり、床上浸水では床上の物は基本的に全て「ゴミ」に変わると思って、身の回りを見渡してみて下さい。当然すぐには住めません。雲泥の差の意味が伝わるかと思います。こうした損失に備えるため、日ごろから保険に入っておくのも一つの手段です。いずれにしても、関東を除き、まだ梅雨明けは見えてきません。まだしばらくは突発的な大雨のリスクが東北から九州まで続くと思って頂き、気象情報には十分ご注意願います。
さて、7月1日から様々な神事・祭事が行われている祇園祭ですが、14日を迎えて32基の山鉾がそろいました。京都旅屋のある町内にも「八幡山」があり、今日が山建てと会所飾りを行う日でした。17日の巡行では金色の社を山に乗せ、鳥居の上には名工・左甚五郎作の雄雌の向い鳩が。今年はその鳩が復元新調されて話題となっています。鳩は八幡神の神の使いで、夫婦の仲が良いことの象徴。八幡山の宵山では子どもの夜泣き止めのご利益もある、鳩鈴・鳩笛が授与されます。色は赤と白、サイズは豆・小・中・大とそろっていますが、例年「豆」と「白」は早く完売する傾向がありますので、お求めの方は早いうちにお越しください。子どもたちが歌う童歌「♪八幡さんの厄除けのお守りは これより出ます♪」の歌もとても可愛らしいです。
また、今年はまだ梅雨明けをしておらず、蒸し暑い中での宵山となる見込みです。14日19時で京都の気温は27.1℃、湿度は80%で不快指数も80に近く、人混みの熱気も加わると熱中症になる恐れがあります。早めの水分補給と無理のない移動を心がけて下さい。特に四条通界隈の道(室町通・新町通)は一方通行になり、思うように動けない時もあります。体調第一で、お祭りの雰囲気をたっぷりとお楽しみください。
ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。