空の青・水の青 夕焼けの赤・朝焼けの赤


今回はにまつわる青と赤のお話です。

毎日暑い日が続きます。今日の京都の最高気温は37.5℃を記録し、近畿のアメダス・気象官署では最高を記録しました。この気温は年間を通じても最も高い気温と言えるレベルの高温で、2011年の年間最高気温36.9℃を上回っています。この先、ここまで気温が上がるかは微妙ですが、引き続き暑い日が続きますので十分にご注意ください。また、2010年は9月に入ってから年間最高気温の38.1℃を記録しており、まだまだ1ヶ月以上、暑さに注意が必要な日々は続きます。

土用の丑の日も過ぎ、もうじき「立秋」を迎えます。過去に何度も書いてきましたが、立秋は「秋を感じられる頃」であり、決して今日から「秋」になることを表してはいません。つまり「真夏の時期に”立秋”があるのは旧暦の遺物で、今とは季節感がずれている」というのは大きな間違い。単に立秋の意味を取り違えているにすぎません。それが証拠に、二十四節気では、大暑(今年は7月22日)の次が立秋で、その次に「暑さが峠を越えるころ」を示す処暑が来ます。処暑が先に来てからの立秋ではないことからも、その意味は明白ですね。まだまだ真夏の暑さが続く中にも「秋を感じる」のが、古の人々の季節感。「秋」という言葉にとらわれることなく正しくその意味を知れば、季節の変化をよりいっそう感じられるようになるでしょう。

夏といえば、海へと行きたくなりますが、京都市街地には海はありません。しかし今年からは水族館があります。水槽の水の深い青は、空の青さにも通じそうですが、実は海の青と空の青は似て非なるもので、質が異なっています。空の青は、空気の粒子に光が当たって、波長が短い青系統の光りが強く散乱されて青く見えています。ここでのポイントは、「青以外にも青に近い他の色も混ざって」空色を作っている点です。一方、水中が青いのは、水には赤系統の波長の長い光を吸収する性質があるためで、残る光は「ほとんどが青色」です。つまり「水色」は「空色」よりも「青」に近いといえます。

また、写真で見るとよくわかりますが、遠くの山ほど青く見えます。これは空が青くなるのと同じ原理で、遠くへ行くほど空気を通る距離が長くなるため、より青っぽくなるのです。一方で夕焼けが赤いのは、宇宙空間から横切る太陽の光が空気を「非常に長い距離」を経て通過してくるために、青系統の光は散乱しつくされ、赤系統の光が残るためです。この「非常に長い距離」を理系的ではなく文系的に想像してみると、日本が夕暮れを迎える頃にお昼の時間を迎えるのはサウジアラビアなどの中東です。その中東の上空に輝く太陽から伸びる横の光が日本を照らしていると考えてみると・・・、太陽光はとてつもなく長い距離の空気を横切っていそうですね。もちろん理系的には、大気の厚さと太陽光の入射角を計算すべきですが。

また、朝焼けと夕焼けも似ているようで、よく見ると赤色の程度や範囲が違っています。真っ赤な夕焼けはあれど、真っ赤な朝焼けはあまり聞きません。これは夕焼け時は日中に暖められた大気が、細かいチリなどを舞いあげて散乱を強めているためで、反対に空気が冷える朝はチリも少なく、赤くなる範囲が狭かったりオレンジに近い朝焼けが見られます。しかも夕焼けは季節によってその色が異なることがわかっています。チリが多い移動性高気圧の季節(春や秋)は赤色が強く、西高東低でチリの少ない冬の季節はオレンジ色が強くなります。面白いですね。このように似ているようで違うものが、水色と空色、朝焼けと夕焼けです。それぞれの個性に気がつけば、よりいっそう空も海も楽しめるかもしれません。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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