西山の秘境 金蔵寺


西山一帯には、善峯寺を筆頭に山寺がいくつかありますが、中でも秘境と呼べるのが金蔵寺(こんぞうじ)。先日訪れる機会がありました。

金蔵寺は小塩山の中腹に位置し、急峻な山道を車でしばらく登って行った場所にあります。道は舗装されていますが、非常に狭く、離合困難な個所も続きます。運転初心者にはお勧めしない山道。徒歩で登る場合は最寄りのバス停から1時間程度かかります。お寺の創建は平安時代以前の奈良時代初期・718年と伝わる古刹。平安遷都の際には桓武天皇が都の四方に経文を納めた岩倉(岩座・磐座)の西の岩倉ともなった由緒もある場所です(ちなみに北の岩倉は、地名でも残る「岩倉」付近です)。

金蔵寺は最盛期には49もの堂塔・伽藍を数えるに至りましたが、応仁の乱の兵火によってことごとく焼失し、江戸時代になって徳川5代将軍・綱吉の母である桂昌院によって再興されました。桂昌院は、近隣の善峯寺も復興しており、幼いころに金蔵寺や善峯寺に参詣していた縁から、お寺を再興しています。金蔵寺の境内には桂昌院の遺髪を納めた、桂昌院御廟が残されています。

西山や一帯の社寺はいずれも京都有数の紅葉の名所として名を馳せますが、秘境・金蔵寺も例外ではありません。私が以前に金蔵寺に訪れたのは2010年の紅葉シーズン。境内は紅葉のピークで、イチョウは黄金色の絨毯。まさに最高の美しさでした。秘境ではありながらも、美しい写真を求めるカメラマンはまばらに訪れていました。金蔵寺に限らず西山の一帯の紅葉は、本当に美しい場所ばかりですので、是非是非、足を延ばしてみて下さい。

今はまだ青もみじの時期ですが、日差しを浴びたエメラルドグリーンの境内も非常に美しく、紅葉の時期が訪れるのを楽しみさせてくれます。境内は山寺だけあって起伏に富み、階段も続きます。たどり着くまでも大変ですが、境内も険しいため、覚悟が必要。でもその分、紅葉も上に下にとダイナミックな景観で迎えてくれます。

金蔵寺にも展望台があって、京都盆地を一望することができます。電線などもあるために善峯寺や三鈷寺のような絶景とはいきませんが、十分に素晴らしい景観を望むことができます。こうした景色を見ていると、この西山一帯の山寺が栄えた理由もわかるような気がしてきます。

金蔵寺には、かつて愛宕山山頂にあった白雲寺に祀られていた勝軍地蔵があります。戦国武将らの崇敬厚い像でしたが、明治期の廃仏毀釈で白雲寺が廃寺となった際に金蔵寺に移されました。こちらについては、また近日中に書きたいと思います。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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