京都の信州 越畑


先日、右京区の山間部にある越畑を訪れる機会がありました。柚子で知られる水尾からさらに奥地へと進んだ場所にある、右京区最果ての地です。

地図で見ると、越畑や樒原の奥地ぶりに驚くかもしれません。水尾ですら大変な山間地なのに、その奥とはいかばかりかと思ってしまいますが、実は亀岡側から回り込む道があり、そちらから行けば、意外と近く行けてしまいます。道も水尾経由よりも断然亀岡経由の方が走りやすくて安全です。ただ、私が訪れた10月2日は、国道477号が亀岡側から廻り田池にかけての区間で土砂崩れによる通行止めでした。迂回路はさほど離れておらず、紅葉山トンネルからの走りやすい道がありますので、ご安心下さい。

さて、亀岡側から越畑へと入るとほどなく目に入るのが河原家住宅。長屋門が印象的で、長閑な山里に立つ家の典型例のような外観をしています。それもそのはずで、この長屋門は築300年以上という元禄9年(1696年)の建築。主屋は明暦3年(1657年)の建築で、年代が確定する民家では京都市内最古。市の登録文化財にも指定されています。河原家は幕末には大覚寺の典医を務め、昭和期に当主が別宅に移った後は30年間、外国の方の住まいとなっていたそうです。家は少し高台にあって石垣も美しく、長屋門へと続く傾斜道には彼岸花が咲いて絵になる風景。この日もカメラマン数名が写真を撮っていました。

また、越畑は「京都の信州」とも呼ばれているほど、山里の非常に美しい景色が見られる場所です。特にカメラマンの間では「棚田」でも知られ、その棚田には蕎麦の花も咲いていました。蕎麦は荒れ地に強く、まさにこうした山間地に向いている作物ですね。越畑は林業が主産業で耕地に乏しい場所であるために、斜面を少しでも活用するために棚田が発達しています。地図で見ると分かりにくいですが、航空写真で見ればその広がりは一目瞭然ですよ。

越畑は山里でありながら閉塞感は無く、むしろ景色は広々としている印象です。遠くの山並みも美しく、空も近く感じました。さすが「京都の信州」、確かに同じ京都とは思えない雰囲気がありました。今の時期はほとんどの田んぼで稲刈りが終わっていましたが、稲穂が垂れる時期や田植えの時期も非常に美しい風景が広がるのでしょう。足を延ばすかいのある集落です。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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