平岡八幡宮の三役相撲


7日に、平岡八幡宮で例祭が行われ、子どもが必ず大人に勝つユニークな三役相撲などが奉納されました。

平岡八幡宮は高雄へと向かう梅ヶ畑にある神社で、神護寺の鎮守社として空海によって創建され、梅ヶ畑の氏神として信仰を集めています。また、江戸時代の1829年に再建された本殿は「花の天井」としても有名。通称は「椿神社」とも呼ばれ、境内には椿の小径(こみち)もあり、古くから椿が自生する名所として知られました。特に願い事をすると一夜にして花開き、願い事が成就したとの伝説を持つ「白玉椿」が見事です。今年の春に訪れた時には美しい桜と椿を同時に楽しむことが出来ました。

平岡八幡宮の例祭には、子どもによる神事相撲が「三役相撲」の名で伝承されています。すでに江戸前期にはこの日に神事相撲があった記録が残り、現在では拝殿前に設けられた土俵で相撲が取られます。小学3年生(8歳~9歳)の子ども(以前は長男のみ)が務める三役と、20歳前後の青年による力士との立ち合いで取られます。この取り組みは神の加護を受けた子どもが必ず勝つことになっており、京郊村落に伝承される代表的な神事相撲として、京都市の無形民俗文化財にも指定されています。子どもの健やかな成長を願うと同時に、小さな体でも全力を出すことで、大きなものに打ち勝つこともできるということを表しているのだそう。

さて、実際の相撲は大人が圧倒的なパワーで子どもを持ちあげては振り回し、子どもは今にも負けてしまいそうなほど追いつめられます(笑)そこに周りの観客からの熱い声援も飛び交って、力を得た子どもが逆襲して大人を押し倒してしまうのです。これがかなり面白いので、是非動画でご覧ください。体格差のある子どもと大人が立ち合いで睨み合う姿も見ものでした。

勝った子どもたちは勝ち名乗りを受け、やはり嬉しそう。上賀茂神社の烏相撲もそうですが、子どもが神前で相撲を取るのは「無邪気」、すなわち邪気がないからこそ。こうした素直な笑顔に、見ているこちらも笑顔になりました。

例祭では、太鼓の奉納もありました。高雄小学校には和太鼓のサークルがあり、数多くの太鼓が境内に並んで、子どもたちによる見事な演奏が披露されました。こうして地域ぐるみで伝統芸能を守っておられるのですね。さらに今年は獅子舞の奉納もありました。平岡八幡宮と同じ名字を持つ方が、縁を感じられて奉納されているそうです。

また、剣鉾差しも奉納されました。こちらも京都市の無形民俗文化財で、現在は神社境内で差されるのみとなっています。剣鉾は祇園祭の鉾と同様に厄をはらうためのもので、子孫繁栄・五穀豊穣も祈願するものです。その重さは数十キロ。しかも重心が上にあるために、持ち上げて歩くのは非常に高度な技術を必要とします。例祭の鉾差しでは今年デビューする方もおり、ややおぼつかない足取りでしたが、周りの方々が万が一に備えてスタンバイをして、無事に境内を一周されました。続いて長年されている方も見事な技を披露。こちらはやはり安定感がありました。

今年は大神輿を支える台棒(だいぼう)だけを担ぐ「台棒担ぎ」が三十数年ぶりに復活しました。この大神輿は、棒と合わせて1トンを超える大型のもので、担ぎ手の減少により半世紀ほど前から神輿が担がれなくなり、かわりに「台棒担ぎ」が行われていましたが、それも青年団解散によって途絶えてしまいました。近年は大神輿をトラックに乗せての巡行となっています。こうして台棒担ぎが復活したことで、将来は大神輿の復活もあるかもしれませんね。今回は神輿の巡行までは見ませんでしたが、地元の方々の熱気も感じ、見どころの多いお祭りです。またいつか、じっくりと見てみたいと思いました。


ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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