中川の里の秋明菊


先日、周山街道の中川の里を訪れると、秋明菊が見ごろを迎えていました。

今日(23日)の京都は、寒い一日でした。最高気温は19.5℃ですが、これは午前0時10分に観測されたもので、日中は毎正時の観測値では15℃台までしか上がりませんでした。この気温はちょうど紅葉の時期、11月下旬の気温です。昼過ぎまで雨が降っている最中は、日中にもかかわらず息が白くなりました。ちょうど今日は二十四節気の一つ「霜降(そうこう)」。都市化によるヒートアイランドと乾燥化が進んだ昨今は、霜が降りる頃はもっと先になりましたが、昨年書いたブログの中で、もし霜降に変わる節気名を今の気候に即して考えなおしてみたらということで、私は「息白(そくはく)」という名前を提案しました。今日はまさに今年初めて息が白くなったのを感じた日。「陰気ますます重なりて 息白く露を結べばなり」ですね。どこかで霜降を解説する機会があれば、この「息白」についても広めていきたいと思います(笑)詳しくは昨年のブログをご覧ください。

さて、中川は高雄を経て世界遺産の高山寺の前を通り、さらに周山街道を進んだ場所にあります。途中にトンネルがあってそこを越えると中川。「京都府の木」でもある北山杉の里としても知られる集落です。かつては峠をはさんだ小野郷とともに京都へと材木や炭・薪などを供給していました。この中川や小野一帯は川端康成の小説「古都」の舞台でもあります。山口百恵さんの最後の出演映画が「古都」で、意外とこの辺りのことを知っておられる方も多いかもしれません。

さて、中川の里には秋明菊が咲く場所がありますが、諸事情により場所は伏せさせて頂きます。秋明菊は別名貴船菊とも呼ばれ、菊とは名前が付いていますが、キクではなくアネモネの仲間だそうです。中川でよく見かけるのは八重咲きの花で、秋の盛りにふさわしい美しい花を咲かせています。もともとは中国生まれだそうですが、貴船でよく見かけられたそうです。山間の気候があっているのでしょう。

北山杉は、磨丸太として茶室や数寄屋に好まれて使われる材木でした。磨丸太は杉の皮をはぎ美しく磨きあげた丸太です。傷がないだけでなく、節もない滑らかな表面を作るためには、枝打ちが欠かせないそうです。しかもまっすぐに育てるのもまた大変だそう。大敵なのは湿った重い雪。ひどい時にはバキバキと枝が折れる音が山に響くと聞いたことがあります。様々な苦労があって美しい丸太が出来上がっています。

また、少し細い丸太を取るのに使われてきたのは「台杉」。室町時代の中ごろ、杉に「取り木」と呼ばれる台をつくり、そこから枝を垂直に伸ばして「立ち木」に仕立て、恒常的に磨丸太を生産する方法が考え出されました。近年はこうした細い丸太の需要が減っているようですが、台杉はその美しい木の形から観賞用として見かけることがよくあります。鷹峯の「しょうざん」にも見事な台杉の見られるお庭があります。中川では台杉のそばに秋明菊が咲く風景も見られました。それにしても山里に咲く花は非常に美しい。キンモクセイの香りとともに秋の深まりを告げてくれる花です。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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