恵比須神社 式包丁披露 2012年


今年も恵比須神社式包丁の披露を見てきました。その「見せる」技を、動画でご紹介します。

恵比須神社は恵比須神(恵比寿、戎とも。以下、表記は恵比須で統一)を祀る神社として、商売繁盛のご利益でも知られています。恵比須様は七福神の一人で、鯛と釣り竿を持つ漁業の神であるだけでなく、釣った魚を物々交換していたところから商売上手な神、すなわち商売繁盛の神様となりました。古事記では、イザナギとイザナミとの間に生まれた最初の神でしたが、その姿がグニャグニャで足が立たなかったことから海に流されてしまうという悲しい話もあります(ちなみに流れ着いた先に祀られているのが、福男選びで知られる西宮神社ともいわれます)。ただし「えびす」として祀られる神は複数あり、釣りの話は事代主神(ことしろぬしかみ)、海に流される話は蛭子命(ひるこのみこと)です。また、一般的に恵比須様はご老人であるために耳が遠いとされ、この恵比須神社でも普通に参拝をした後、本殿の左側に回って壁を叩き、すなわち神様の耳元で再度お願いをするのが習わしとなっています。

さて、恵比須様の縁日として最もにぎわうのは1月10日前後の「十日えびす(初えびす)」ですね。恵比須様の誕生日の縁日として、京都中の恵比須神を祀る神社が賑わいを見せます。そちらの様子は以前にブログに書きましたので、ご覧ください。秋にも恵比須様の縁日があり、それが10月20日。恵比須様が海からおいでになられたのが旧暦の9月20日で、現在は新暦に換算して10月20日に執り行われます。また、10月の別名は神無月(かんなづき)で、神は出雲の国に行ってしまうのですが、実は留守を守る神もいて、その一人が恵比須様だそうです。ちょうど10月から11月は秋の実りの時期ですので、商売繁盛の神である恵比須様に五穀豊穣を感謝する意味もあるよう。規模は1月には及びませんが、恵比須神社では神前に奉納する魚をさばく式包丁が披露されました。

披露をする生間(いかま)流は、織田家や豊臣家にも仕えたとされ、武家料理を今に伝える日本料理の一流派。式包丁ではまな板の上にある魚などには手を触れず、包丁と箸とでめでたい形に盛り付けて行きます。京都では貴船神社や八坂神社などでも奉納を行っています。まず奉納された鯉は「五穂(いつほ)の鯉」と呼ばれる形式で盛りつけられ、米・麦・粟・稗(ひえ)・大豆の収穫を祝う意味があります。

続いて恵比須様のゆかりでもある鯛。「藻隠れの鯛」と呼ばれる形で盛りつけられました。その名の通り海中の藻の中に隠れている鯛の姿を表すのですが、まさか鯛もこのように捌かれるとは思わなかったことでしょう。式包丁はきびきびとした所作も見もの。もともと式包丁は節句(3月3日、5月5日、9月9日など)を祝う節会の中で、魚の切り方でめでたさを表現するために行われたものでした。威厳や風格を感じさせる見事なさばきは「見せる」という意識の中から発展していったのでしょう。だからこそ写真ではお伝えできない魅力があります。今回も動画がありますので、是非ご覧になってみて下さい。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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