時代祭 2012年 堺町御門にて


22日に行われた時代祭。今回は堺町御門から出発していく場面です。

前回のブログでは、出発前の京都御苑での様子を書きました。出発時間ギリギリまで御苑内をウロウロしていましたので、行列を見られる良い場所はあらかた埋まっていましたが、運良く堺町御門を出たところで見ることができました。

時代祭の行列は、まず京都市長らが乗った名誉奉行の馬車列に続き、幕末の維新勤王列から始まります。鼓笛もあっていよいよ行列がやってきたという感じがします。続いて、維新志士列。坂本龍馬などの有名人が加わっていますが、今回は堺町御門ですので、八月十八日の政変でこの門を締め出されてしまったことが発端の、七卿落ちの一行が気になりました。

さて、続く行列は徳川城使上洛列。時代祭は、こうして時代をさかのぼって行きます。堺町御門も和風の佇まいですのでどの時代とも合うのですが、やはり江戸時代の徳川城使上洛列が一番あっているように感じました。長い大名行列を見ているかのような列です。この列は先頭の奴(やっこ)と呼ばれる人物の掛け声と所作で、長持を持つ一行が軽快に進んでいく場面が見どころです。

続いて、江戸時代婦人列。和宮を始め、江戸時代に京都で活躍をした女性が登場します。かつては花街の奉仕でしたが、現在は京都市地域女性連合会によって奉仕されています。やはり婦人列は人気があり、華やかな印象を受けますね。

続く豊公参朝列には牛車が登場!ギシギシと進んでいく様子は葵祭とも共通しています。実はこの列では秀吉や秀頼といった「豊公」の姿は無く、牛車に乗っているとの設定なのでしょう。その代わり、秀吉に仕えた五奉行が列に加わっています。続く、織田公上洛列には羽柴秀吉として、秀吉が加わっています。織田公上洛列では、信長に仕えた武将たちも出て、名前を見ているだけでも楽しくなります。

そして2008年に加わったばかりの室町幕府執政列・室町洛中風俗列が続きます。室町時代は、茶・能・狂言・華道など、現代に通じる数多くの文化が花開いた時代で、京都では北山文化・東山文化を代表する金閣・銀閣が出来たのも室町時代。足利尊氏が後醍醐天皇に謀反を起こした人物ということで、御所のある京都では長年室町時代がありませんでしたが、やはり欠かすことが出来ない時代。まだ新しい列ということで衣装も綺麗です。

続いて南朝側の楠公上洛列。後醍醐天皇が流罪になった先の隠岐から戻られる際に、楠木正成が出迎えた場面を再現しています。この列は武士の列で、鎧武者がそろっているのが特徴です。この次には中世婦人列。大原女・桂女に続き、淀君や静御前もここに入ります。

鎌倉時代は城南流鏑馬列。承久の乱の折り、後鳥羽上皇は城南離宮で流鏑馬を催すことを口実に近畿一円から1700名あまりの武士を集めました。この場面を再現した列です。こうして京都目線で列が作られているのが面白いですね。そして藤原時代が続きます。藤原公卿参朝列では敷物に使う豹や虎の皮が印象的でした。

次は平安時代婦人列。今年は先斗町の舞妓さんらによって奉仕されました。今年の時代祭のポスターは「巴御前」でした。長刀を持ったその凛々しい姿は、京都へ攻めのぼって平家を西国へと追いやった木曽義仲に付き従って出陣している場面です。今年の大河ドラマでも登場する常盤御前は、今若・乙若を連れ、牛若は可愛らしい人形として懐に抱かれています。

小野小町は唐風の残る女官の礼服姿。紀貫之の娘は手に梅の枝を持っています。清涼殿の梅が枯れた折、紀貫之の邸宅内にあった立派な梅を天皇は所望しますが、移した梅には紀貫之の娘が詠んだ和歌が添えられていました。「勅なれば いともかしこし鶯の 宿はと問はばいかが答へん」。「恐れ多くも天皇のご命令ですので、この梅を献上いたしますが、この梅を住処とする鴬が『私の家はどこ?』と聞いてきたら、何と答えればよいのでしょう」といった意味の歌。この話は「鶯宿梅」として知られています。

時代はいよいよ平安初期へ。延暦武官行進列では草摺(くさずり)と呼ばれる腰を覆う鎧がカチャカチャと音を立てる様子が印象的。その後に、延暦文官参朝列が続きます。さらには神饌講社列・前列と続き、平安神宮の祭神である桓武天皇と孝明天皇の乗る鳳輦(神輿)が続いて行きます。こちらも長く立派な列です。

列の最後は白川女献花列・弓箭組列が飾って、およそ2時間にわたる行列は終わりを迎えます。時代祭はこのように壮大な時代絵巻が続く行列で、どの列も詳細な時代考証によって衣装が作られ隊列が組まれていますので、なかなか勉強にもなります。どの時代にも一生懸命に生きていた人がいて、その姿を現在を生きる京都市民が再現するのというのもまた素晴らしいことでしょう。京都三大祭の中でも一番参加者の笑顔が多いのが時代祭だと思います。私もいつかまた参加してみたいですね。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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