六波羅蜜寺 本尊御開帳


六波羅蜜寺では、12月5日まで本尊・十一面観音立像の御開帳が行われています。御開帳初日の11月3日に早速行ってきました。

秘仏の国宝・十一面観音立像は、11月3日から12月5日かけて33日間の特別開帳。「33日」なのは、観音が相手に応じて33の姿に変化をし、人々を救うとされるところから来ています。2009年にも西国三十三ヵ所を始めた花山法皇の一千年遠忌を記念して「結縁開帳」されたので3年ぶりですが、京都新聞によると、御開帳は空也上人生誕1100年で公開された2003年以来9年ぶりとのことです。この相違の理由はわかりません。

辰年に開帳される理由です。六波羅蜜寺の前身である西光寺の頃、本堂の前に大きな池があって龍が住んでいました。その龍はお参りの方々を脅かしたり、お参りの邪魔をしたりしていたそうですが、その事を知った空也上人は、錫杖を振って龍を諭すと、龍は改心。寺とお参りの方々守ることを誓い、それ以降龍は寺の守り神となりました。辰年の御開帳が恒例なのはこのためで、1363年に再建された本堂にも見事な龍の絵が描かれています。

この話にちなみ、江戸時代から「淵龍」と書かれた護符が、12年に一回の御開帳時には授与されています。色は5色あって今回は紫。全て集めるには60年(12年×5色)かかるという気の長さですが、全色集まると末永く家運が栄えるとされます。今年は11月3日~5日の午前9時から各日2千人に限って配布され、連日朝から大賑わいでしたが、護符の授与が終了した6日朝に前を通りかかると、さすがに人が少なくなっていました。

3日は9時台に六波羅蜜寺に到着。境内はすでに非常に大勢の人で埋め尽くされていました。すぐに「淵龍」の護符は入手できたものの、ご本尊の拝観時に護符には朱印を押して頂けます。結局2時間以上の待ち時間でしたが、その間に法要が行われて本尊が御開帳される様子が聞こえてきました。

この十一面観音立像は、六波羅蜜寺の前身である「西光寺」の本尊でもあります。高さは2.59m(258.5cm)ある大型の観音で、寺伝では951年に京都で疫病が流行った際に、空也上人が彫り、リヤカーに乗せて市中を歩き、小梅干と結昆布を入れ仏前に献じた茶(皇服茶)を病人に授け、踊りながら念仏を唱えて疫病を鎮めたとされます。実際に作風は平安時代中期のものとされ、2.5mを超える巨像ながら、体幹部分はヒノキの一木造りで全体として丸みのある穏やかな造型。空也上人の伝説とも矛盾はなく、1000年を越えて人々の信仰を集め続けてきたとは鳥肌が立ちますね。十一面観音は観音の深い慈悲を表しており、信ずる者は10種の現世利益と4種の来世での果報を授かれるとされます。特に現世利益は素晴らしく、病気平癒はもちろん、火や水の難に合わない、不慮の事故でも死なない、金銭や食事に困ることがない、など願ったりかなったりの御利益が並んでいます。

六波羅蜜寺のある地は平家の本拠地「六波羅」で、平家が拠点を構えた頃には既に六波羅蜜寺は存在していました。昭和41年に本堂が解体修理をされた際、須弥壇(しゅみだん)の下から泥塔八千基が南北8m、東西2mの幅にわたって発見されました。鎌倉時代初期に埋められたものとも考えられていますが、平安時代に安徳天皇が生まれる際、この六波羅蜜寺でも安産祈願の読経が行われ、その際に泥塔が奉納されたともされます。出土した泥塔はそれぞれ指紋が異なっていて、職人がまとめて作ったものではありません。もしかすると、平家一門が、それこそ清盛や徳子が自らの手で作ったものもあるかもしれません。安徳天皇が生まれたのは、六波羅蜜寺のすぐそばにあった平頼盛の屋敷・池殿で、付近の妙順寺には安徳天皇産湯の井戸も残されています(通常非公開)。

六波羅蜜寺の境内には平安時代のものとされる平清盛の供養塔が残り、阿古屋塚は平家に仕えた平景清の愛人・阿古屋を偲ぶもので、歌舞伎の演目「壇ノ浦兜軍記」での「阿古屋の琴責め」でも親しまれています。宝物館では清盛が出家をして浄海と名乗った頃の像があり、手には自らの血を混ぜて平家一門の繁栄を願った経巻を持ち、穏やかな表情をしています。また、空也上人像は非常に有名です。生き写しのごときその像では、口から発せられる「南無阿弥陀仏」の言葉が立体表現されて、仏師(康勝)の発想が素晴らしい。キラリと光る玉眼も見逃せません。他にも素晴らしい仏像が多数あり、見どころが様々にある六波羅蜜寺。12月5日までのこの機会に、是非ご本尊をご覧になってみて下さい。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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