昨日は雪の貴船神社をお伝えしましたが、今回は雪の鞍馬山です。
まず天気の話。厳しい寒波がやってきました。今回の寒波はやや長期戦で30日頃までは寒い日が続きそうです。一方、本日(25日)発表された1か月予報では、2月の初めは平年より暖かくなる予報が出ています。今年は春らしい立春となるかもしれませんね。厳しい寒波が来るとなれば、京都でも雪が気になりますが、予定通りといいますか、今日は鞍馬・大原などの洛北でも雪は積もっていません。
雪が積もるかどうかにおいて最も大切なのは寒気の強さよりも、日本海からの雪雲を運ぶ風向きです。今回は西北西で、内陸まで雪雲が入りにくいため積もっていないというわけです。明日26日の後半には風向きが一時的に北寄りに変わりますので、その段階で洛北を中心に雪が舞い、多少積もってくるかもしれません。ただ、それも一時的。最も雪が積もる可能性が高いのは28日未明からとなりそうです。
さて、今回「雪の鞍馬寺」と書かず「鞍馬山」と書いたのは、私が訪れた日には鞍馬寺では本殿金堂前の辺りからしか雪が残っていなかったためです。鞍馬寺と貴船神社では、貴船神社の方が雪が残りやすいため、冬らしい雪景色を見たい場合は貴船神社へ先に向かうとよいかもしれません。ただ、京都の冬の観光コースで最も雪が見られるのは鞍馬寺と貴船神社を結ぶ、鞍馬山の山中。予め鞍馬山を目指すのでしたら、鞍馬寺へ先に向かい、ケーブルで上に登って鞍馬山から貴船神社へと向かうと効率的です。
鞍馬山の山中の雪は、実は昨年もブログに書いていますので、よければご覧ください。二年続けて雪中の鞍馬山へと足を踏み入れてみましたが、やはりこの神秘的な雰囲気は格別です。ただ、圧雪や氷で足元が非常に悪いので、必ず歩きやすい靴でお越しください。ハイヒールなどで臨まれるのは避けた方がよいでしょう。また、登り口には杖も置かれていますので、あったほうが安全です。くれぐれも無理をしない範囲で、自己責任で山には立ち入りましょう。
鞍馬寺の歴史等は昨年のブログに書きましたので省略しますが、鞍馬山は牛若丸こと源義経が天狗と修行をした場所としても知られます。そんなことを思いながら、大杉権現社からメインの道へと戻る雪の山中を歩いていると、静御前の「吉野山 峰の白雪 ふみわけて 入りにし人の あとぞ恋しき」の歌を思い出しました。源義経の妾として知られる静御前。義経が見初めたのは、神泉苑で行われた雨乞いの舞の時だったともされます(その後の「住吉での雨乞い」との話も)。彼女が舞うと黒雲が湧き立ち、たちまち雨が降ったそう。義経はやがて兄・頼朝に追われ、静も連れ立って逃げていきますが、険しく女人禁制の山であった吉野山を前に、二人は泣く泣く別れることになりました。
その後、鎌倉の頼朝に召しだされた静御前。義経の居所は「存じません」と答えるばかり。静は舞の名手ということで、鶴岡八幡宮で舞を舞うようにいわれます。「吉野山 峰の白雪 ふみわけて 入りにし人の あとぞ恋しき」。彼女は義経をしたいながら、美しく舞ったといわれます。「反逆人を恋い慕うとはけしからん!」と激怒する頼朝、「殿、許してやってください。けなげな女心、私にも痛いほどよくわかります」と制する妻の政子。時を超えて人々の胸を熱くさせてくれるエピソードです。静はその後、京に戻りますが、二度と義経と逢うことはできませんでした。
かの義経が踏み分けて行った峰の白雪は、このような光景だったのか。場所は違えど、義経ゆかりの人気(ひとけ)のない山中でそんなことを思いました。やがて山道は不動堂や魔王殿を経て貴船神社へと続きます。メインの道中には未知の道を探検するかのような若い女性もいれば、スーツ姿の男性も歩いていて、ふっと、現代に戻ったような気がしました。皆様もくれぐれも足もとには気をつけて、冬の鞍馬山をお楽しみください。
ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。