立春 雲の彼方の春 不確実な雪


2月4日は立春。「春の気配を感じられる頃」にふさわしく、ここ数日は春らしい日もありましたが、5日夜から6日朝にかけて、近畿の広範囲で雪に注意が必要です。

今年の立春の京都は、朝は比較的暖かったものの、日中は8.3℃までしか上がらず、平年並みの気温となりました。「暦の上では今日から春」と、テレビでは何人もの気象解説者が口にしていましたが、それは間違ってはいないものの、「春は名のみ」という誤解を生む表現かもしれません。このブログの読者には聞き飽きた話かもしれませんが、立春は「そろそろ春の気配を感じられるころ」を表す節気であって、決してポカポカと暖かい春になることを表してはいません。で、あるならば、きちんと立春の意味まで伝えないと、「まだ寒いのに春というのはおかしい」という、誤解を広めてしまいかねません。

立春は、年間平均気温においても、立秋以来下がり続けていた気温が、半年ぶりに上昇に転じる重要な転換点。これから8月初めにかけて、平均気温はずっと上がり続けます。立春の時には、なぜ春というのかをちゃんと伝え、「まだまだ寒い冬の中に、春の兆しを感じる風雅さ」を伝える機会なのではないでしょうか。春の兆しとは、凍てつく冬を乗り越え、生命が活力を取り戻す兆しでもあります。皆さんも、身の回りの春の気配を探してみて下さい。きっと、小さな春が見つかり、古人が考え出した「立春」の絶妙さを感じられることでしょう。

さて、今の時期はまだまだ冬の勢力が強く、つかの間の春の空気は雨となり雪となり、儚く消えることがほとんどです。古今和歌集に載る、清原深養父(きよはらのふかやぶ)の歌には、「冬ながら 空より花のちりくるは 雲のあなたは 春にやあるらむ」という一首がありますが、5日夜から6日の朝は、この歌の通り、近畿一円で空から「花」、すなわち雪が降るかという予報です。実はこの歌は、南岸低気圧によってもたらされる雪の特徴を実によく捉えていて、地上の冷たい冬の空気の上、「雲のあなた(彼方)」には暖かい春の空気が吹き込んで、それが雪の元になっているのです。古人の観察眼や想像力には感嘆させられますね。雲のあなたの春風が、地上にまで下りてくると「春一番」が吹きます。九州南部では今日(4日)、過去34年間の観測史上で最も早い春一番が観測されました。

今回は普段雪が積もらない大阪などの都市部や、中南部平野部でも積雪となる可能性があります。ただ、雨雪の判定や具体的な積雪量については、予想が非常に難しく、明日夕方の「最新情報に注意して下さい」。可能性で言えば、広範囲の交通機関の乱れ、思いもよらぬ積雪量というのも考えられますし、うっすら程度で終わることや、雨で経過することもありえます。ただ、内陸や山沿いでは積もると考えておく方が安全でしょう。

また、関東でも主に6日未明から日中にかけて雪が降り、南部でも積雪となるところがある予報が出ています。1月14日の大雪は、10年に1度とも言われる発達した低気圧によってもたらされ、事前には大きく積もる予報ではなかったことから混乱が生じました。その後の「雨」では、安全目に雪マークの予報(雪か雨)が出されていましたが、結果的に雨だったことで、また「外した」という印象が強まってしまいました。

天気予報は確率論ですので、予報には常にブレ幅あります。本来、そのブレ幅の中に雨も雪も両方があり得、結果によって影響が大きく変わるような場合、「雨」「雪」という単一の天気マークのみので断定的に表現するのはおかしいのですが、現時点での天気マークでは、細かい表現は出来ません。すなわち「最新の情報に注意」と、私やテレビの予報士が言っている時は「単に天気マークの最新を見て下さい」という意味ではなくて、「テレビなどで予報士からの、”最新の詳しい解説”を聞いて下さい」という意味になります。雨と雪、どちらの可能性が高いのか、雪になるならどれくらい降りそうなのか、降るならいつからいつまでか。表現に限界のある天気マークではわからない細やかな話を是非聞いた上で、行動判断に繋げて下さい。

今回の雪については、「チーム森田の天気で斬る」のブログでの解説が、予報士が考えているブレ幅を誠実に伝えてくれています。是非、ご参考になさってください。余談ですが、ブレ幅のある天気予報をいかに伝えるかは難しい問題です。私は、予報担当者が考えるブレのシナリオを、受け手に詳細に伝えるべきという立場ですが、かつて私が気象会社にいたころ、それでは「受け手は混乱するから、予報は言い切れ」という上司もいて、衝突したことがありました。確かに時には、言いきることも必要です。天気予報は人間が作るもので、様々な考えがあるのも事実。そして、その社会的影響の大きさからくる予報担当者のプレッシャーは、経験者にしか分かりえないものがあります。今回も多くの担当者が、プレッシャーと戦いながら、明日の夕方の予報を組み立てるのでしょう。今回の雨雪予報も社会的な物議をかもしだすかもしれませんが、「最新情報にご注意ください」。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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