神護寺の雪化粧


9日の朝は、洛北など山沿いを中心に雪化粧となり、今回は高雄の神護寺など三尾へと足を延ばしてきました。

実は8日夕方の時点ではレーダーでは雪雲はどんどん弱まり、ライブカメラでも高雄には積雪はありませんでした。それでも雪が積もってきたのは、「真北」の風があったからでしょう。京都で雪が降るには日本海側から雪雲が流れ込む必要がありますが、日本海から雪雲が山々を越えてくる距離が短くなればなるほど雲は弱まらずに、雪が降りやすくなります。逆にいえば、非常に強い寒気が来ても、風向きが西寄りで海までの距離が遠い場合は京都では雪が降りませんし、今回のように雪雲は弱まりつつあっても、風向きが海から最短の真北であれば、京都でも雪が積もることがあるのです。

一般的に「真北」の風になりやすいのは、冬型が緩んで高気圧が張り出して来る時です。西高東低の冬型が強い時は、空気の流れはどうしても西寄りの傾向が現れやすく、その分(特に上空の)寒気が強かったり、JPCZと呼ばれる発達した雪雲の帯がかからない限り、京都では積もりません。一方、冬型が緩んで高気圧が張り出すと、むしろ高気圧の時計回りの風の流れが一時的に「真北」からの流れを作り、日本海の雪雲を京都まで運びます。冬型が緩むタイミングこそ、京都では雪が降りやすい時なのです。ただ、この場合は雪雲は弱まりつつあるため量は積もらず、影響も洛北山沿い中心となります。

この日は、神護寺に到着したのは10時前で、日なたの雪はどんどん溶けていまいた。京都の雪景色は、10時までが勝負のことが多いです。それでも、綺麗な紅葉で知られる高雄の楓の木々に雪が積もる様子は華やかでした。家を出る時に見たライブカメラでは神護寺の階段には雪が積もっていましたが、私が到着した時には、既に雪は消え、安心して上ることができました。

神護寺の境内も思ったほど雪はありませんでしたが、日陰や建物の屋根はまだ白く、冷たい空気が境内を包んでいました。金堂で創建当初から伝わる国宝の薬師如来像を拝み、五大虚空蔵菩薩で知られる多宝塔を拝し、かわらけ投げが名物の清滝川への深い谷・錦雲渓が見渡せる場所へとやってきました。

現れたのは雪に包まれた雄大な山並み。この風景を見たくて、バスに飛び乗ってここまでやってきました。冬の間もかわらけ投げは出来ますが、投げる場所の店は閉まっているため、かわらけは入口か金堂であらかじめ買われてから行って下さい。それにしても、京都の中心地からわずか1時間ほどでこれほどの絶景を楽しめるのもありがたいことです。

この日の神護寺へは雪景色を求めてか、人が何組も訪れていました。今でも山の中に立ち、空海や最澄の事跡や荒法師・文覚の物語をしのぶことができる神護寺。大原や鞍馬よりは雪を見られる可能性はやや低くはなりますが、それでも市街地よりは雪が積もりやすい場所です。あえて冬に足を延ばしてみるのもよいかもしれません。次回は、同じ日の西明寺や高山寺の様子をお届けします。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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