上賀茂神社 紀元祭 2013年


2月11日に上賀茂神社紀元祭が行われ、蹴鞠などの日本のスポーツが奉納されました。らくたびさんの散策でご案内させてていただきましたが、多くの方にご参加頂きましてありがとうございました。

上賀茂神社の紀元祭の見どころはなんといっても蹴鞠です。京都で蹴鞠といえば下鴨神社で1月4日に行われる蹴鞠始めが有名ですが、こちらは大変な混雑となり、人垣の向こうに飛ぶ鞠しか見えなかったという方もおられることでしょう。また、蹴鞠の飛鳥井家の邸宅跡に立つ白峯神宮でも、4月14日の例祭と7月7日の精大明神祭に合わせて蹴鞠の奉納が行われています。こちらも下鴨神社ほどではありませんが、土日に当たると大混雑となる時があります。今年は4月14日が日曜日。例年より人出は多いかもしれません。

一方、比較的に人出の心配が要らないのが、上賀茂神社の紀元祭での蹴鞠奉納。開催日は祝日ではあるものの、上賀茂神社へは比較的行きにくい上に、行われるのが寒い冬の午前中。紀元祭と蹴鞠が結びつく方も少ないとあって、特に後半は最前列で見ることが可能です。じっとしていると寒い時期ではありますが、優雅な蹴鞠を優雅に見られる貴重な機会となっています。

私は午前9時過ぎには訪れ、剣道の奉納を見てきました。面!胴!小手!と、男女とも勇ましく声をあげて打ち込んで行きます。剣道はこうしてかけ声を出さないと有効打として認められませんので、とても大切ですね。また、有効打に必要なものに「残心」があります。単に打てばよいのではなく、「充実した気勢、適正な姿勢をもって」正確に打ち込んだ後も、相手に隙を見せず相手の攻撃を返せる姿勢が求められ、これにも日ごろの鍛錬が欠かせないのでしょう。まだ体の小さな子どもが、大きな大人(?)に打ち込む様子が印象的でした。

上賀茂神社の紀元祭はこの後、国旗の掲揚や君が代の斉唱もあります。紀元祭が行われる2月11日は、紀元前660年に初代天皇・神武天皇が即位した日とされ、戦前は紀元節として国家的な行事として祝われていました。戦争を経て紀元節は廃止されましたが、昭和42年に「建国記念の日」として国民の祝日となりました。なお、神武天皇が即位した紀元前660年は縄文時代に当たり、実在性は疑問視されていますが、古事記や日本書紀には九州の日向国から兄弟とともに東へ攻めのぼってくる話などが描かれています。

また、熊野から大和国へと神武天皇を助け導いた八咫烏(ヤタガラス)は、上賀茂神社のご祭神のおじいさんである、賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)の化身とされていて、神武天皇と賀茂社はつながりが深いともいえます。さて、剣道などに続いて奉納されるのは空手。仮想の相手に対し各種の技を繰り出し、一人で演武する「形(かた)」は、機敏な動きで迫力があります。以前、全日本空手道選手権の決勝をテレビで見たことがありますが、チャタンヤラ・クーシャンクーや、スーパーリンペイといった印象的な形の名前や、その素晴らしい技のキレに感動さえ覚えたことを思い出します。

そして普段の練習では行わないそうですが、板割りも特別に披露して頂けました。やはりこれも力というよりも技によるところが大きいようで、普段の練習が無いぶん、割れない子もいたり、かたや女の子でも見事に割って喝さいを浴びたりと様々でした。空手も剣道も、普段じっくりと見ることがありませんので貴重な機会でした。(板割りの写真は昨年のものです)

お客様と境内や社家町を散策し、戻ってくるころには蹴鞠が始まっています。じっとしていると体が冷える寒い時期ということで、蹴鞠は後半ほど人が少なくなり、好きな場所で見やすくなります。この日は時雨れ模様で弱い雨が断続的に降り、風も時折強まることもありましたが、幸いにも蹴鞠の時間帯は風も乱れず日差しもあって、昨年よりもラリーが長く続いていました。鞠の重さは約150グラムしかないため、風があると蹴る瞬間の足元で微妙に変化をし、あらぬ方向に飛んでいきやすくなるそうです。

蹴鞠は、相手に蹴りやすい球を蹴ることが大切で、勝ち負けは無く、できるだけ長く蹴り続けることに価値を見出す遊びです。鞠を蹴る時の独特な音、「アリ ヤア オウ」のかけ声、雅やかな衣装など、機敏な動きがある一方で優雅さも兼ね備えています。実際には、袴を着て鞠を蹴るのも練習しないと難しいそうで、白峯神宮で行われている蹴鞠(しゅうきく)保存会の皆様の練習風景では、普段着ではなく袴姿で練習されている様子を見ることができます。

こうして、しばし優雅な時間を過ごさせて頂きました。上賀茂神社は京都有数の古社で世界遺産にも登録されています。平成27年には式年遷宮(式年造営)を迎え、吹き替え屋根の檜皮の奉納も、受け付けられています。境内には点々と摂社末社が祀られ、川に沿って林の間を散策していくと様々な御利益のお社にも出会えますので、じっくりと探検してみるのもおススメです。今回、散策にご参加頂きました皆様、ありがとうございました!

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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