下鴨神社 流しびな 十二単のお雛様


3月3日に下鴨神社で流しびなが行われました。今年はお雛様の十二単の着付けの様子をお届けします。

数々の行事が行われる京都のひな祭りですが、下鴨神社の流しびなも人気を誇っている行事の一つです。流しびなの詳しい様子は昨年のブログで書いていますのでそちらをご覧ください。下鴨神社では人間のお雛様とお内裏様が登場するのも特徴で、お雛様の十二単(ひとえ)の着付けも披露されています。今年はその様子を見てきました。

下鴨神社の境内は朝から大賑わい。特に御手洗川での流しびなの行事は始まる1時間半前で既に3重の人垣でした。地元の子どもたちが合唱でも参加するため、その親御さんが来られたり、舞妓さんや十二単のお雛様、さらにマスコットのたわわちゃんも登場するとあって、多くのアマチュアカメラマンも訪れています。行事は11時過ぎからですが、前の方で見るためには2時間~3時間ほど前には行かないと難しいでしょう。また御手洗川辺りへの通路が狭くなっているため、開始時刻になると人が殺到し、そもそも近づくことさえできなくなります。お手洗いや人の圧力など、十分にご注意の上、見学下さい。

下鴨神社に登場するお雛様とお内裏様は、結婚予定のカップルから公募で選ばれています。近年は神社での結婚式も人気を集めていますので、応募も多いのかもしれませんね。今回私が狙った十二単の着付けは、10時半ころからひな人形の置かれている橋殿で行われます。なお、10時過ぎまでは雛人形と一緒に写真を撮ることもできます。着付けの場面も直前には人が殺到するため、30分前には橋殿の前で待っている方がよいでしょう。こうした華やかな行事では一方でマナーの悪いカメラマンも目にすることがあります。今回は前に平気で割り込んできたりする方も見かけましたが、もってのほかであることは言うまでもありません。

さて、十二単の着付けはまず、白の小袖に紅の長袴を着た姿から始まります。紅は鳥居の色でもあるように魔よけの色でもあり、紅袴は既婚者が着用するものだそうです。着付けを担当する衣紋者(えもんじゃ)は、2名で前と後ろに立ち、連携して進めていきます。まず萌黄色(もえぎいろ)の単(ひとえ)を着せます、後ろの衣紋者が着せ、前の衣紋者が袖を通したり紐を結ぶなど、整えていきます。こうした着付けにも細かな作法があり、古くから衣紋道として確立しているそうです。

次に袿(うちき)を着せていきます。この袿は1枚目は薄い色で、重ねるごとにだんだんと色が濃くなっていきます。こうすることで、襟元の美しいグラデーションが現れ、平安貴族たちは競い合って重ね着をしたそう。最高ではなんと40枚程も重ねたことがあったそうです。ただ、それでは立ってまま座れず、座ったまま立てなくなって機能面が全く失われ、かえって見苦しいということで、やがて多く着ることは少なくなっていったそうです。また、貴族の世から武士の世に変わるにつれて多くの着物を重ねることが贅沢とされ、室町時代には「5枚」と決められるに至りました。

下鴨神社でも5枚の袿(うちき)を重ねていき、1枚づつ増えるたびにみるみる紫色が濃くなっていきます。こうして5枚重ねるところから、袿のことを室町時代から「五衣(いつつぎぬ)」とも呼ぶようになりました。なお、結び紐は2本で、1枚着せて結ぶごとに、その下の紐を抜き取っていきます。こうして、結局は紐1本で留めているため、脱ぐときは紐をほどくだけというのも十二単の特徴です。なお、脱ぎ去った着物の様子から「裳抜けの殻」という言葉でき、源氏物語にちなんで「空蝉(うつせみ)」とも呼ぶそうです。

袿(うちき)に続いて深紅の打衣(うちぎぬ)を重ねます(なお、色は今回の着物の色で一般的には様々です)。砧(きぬた)台の上で杵(きね)で打って仕上げたのでこう呼ばれ、光沢があり、着物に張りを出して恰好よく見せる役割があります。その上には、萌黄色で美しい柄の入った表着(うわぎ)を付けます。表着には紋が描かれ、この数が多いほど身分が高かったそうです。

そして次に唐衣(からぎぬ)を着せます。女性らしいピンク色でした。中国の唐から伝わったので唐衣(からぎぬ)と呼ばれています。襟元が裏返っているのが特徴で、現在の羽織りの原型となった着物。袖もやや短く、下の表着(うわぎ)も見えるようになっています。

最後に着せるのが、スカートのような裳(も)です。裳は腰につけ、前は無く、後ろに長く引きずるが特徴です。これも長いほど身分が高いのだそう。着物が整うと、懐には”たとう紙”を挿し、手には檜扇(ひおうぎ)を持って出来上がりと相成りました。十二単というと12枚を重ねると思われがちですが、実際には今回も10枚を着ており、12枚ではありません。ただそれでも重さは10kg程度になるそうで、やはり動くのは大変です。かつては袿の枚数を「単」で数え、十二単は正確には12枚の袿を重ねた状態を差します。ただ現在では、「じゅうぶんに」という意味も込めて、五衣唐衣裳 (いつつぎぬからぎぬも)のことを十二単と呼んでいるのです。

この後、お雛様は流しびなの行事へと向かって行きました。下鴨神社では各行事で十二単の着付けが披露され、時には雅な王朝の舞を見せて頂けることもあります。あるいは、団体が対象のようですが、1回4万円から5万円の初穂料を納めて披露して頂くことも可能です(団体80席まで)。やはり平安装束は雅やかですので、機会がありましたら、ご覧になってみて下さい。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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