市比賣神社 ひいなまつりの「ひいな遊び」


女人守護のご利益で知られる市比賣(市比売:いちひめ)神社。3月3日は恒例のひいなまつりが行われ、ひいな遊びとして、古くから伝わる雅な遊びを体験できました。

京都では各地でひな祭りの行事が行われます。七条界隈では、三十三間堂がその名前にちなんで3月3日は無料開放されました(春桃会)。お堂の前では、京都女子大学の落語研究会による寄席や、瀬戸内寂聴さんの法話などもあって、人気を集めています。瀬戸内寂聴さんは90歳を越えておられますが、法話は春桃会の恒例行事として、今年も元気に登場されたようです。

三十三間堂の隣の法住寺では「つり雛展」が行われました。こちらも近年の恒例行事で、昨年のブログに書かせて頂きました。今年も訪れてみると、三十三間堂の賑わいとは対照的に静かで、そして目の前でつり雛を眺めることできます。京都ではつり雛は珍しいですが、毎年この美しさには魅了されますね。

そして、市比賣神社(市比売神社)では「ひいなまつり」が行われます。市比賣神社は河原町七条を上がってしばらく行くとある神社です。元々は平安京の市場の神様でしたが、秀吉の命によって現在の場所に移ってきました。祀られている神様がすべて女性であるところから、女性の守り神として厄除け・縁結び・子授け・安産などのご利益で知られ、近年のパワースポットブームと相まって、女性に人気を集めている神社です。

3月3日の「ひいなまつり」では、神社には雛飾りなどが登場し、ご本殿では厄除けの人型(ひとがた)と天児(あまがつ)でのお祓いも特別に行うことができます。また、河原町通を挟んだ「ひと・まち交流館」で、「ひと雛」が登場するのも見どころです。「ひと雛」はかつては市比賣神社の境内で行われていたのですが、近年は広い会場を確保できる「ひと・まち交流館」に移っています。

「ひいなまつり」は、ひと雛の着付けの披露や、貝合わせなどの雅な遊びの体験、お抹茶、桃のお守りを含めて千円の観覧料が必要で、定員もあります。同じ内容で二回に分けて行われていますが、チケットはどんどん売れていきますので、早めに行かれるとよいでしょう。第一部は13時から(入場12時半)、第二部は16時から(入場15時半)で、それぞれ2時間ほどの内容です。

今回は、雅な遊びの体験「ひいな遊び」の様子をご紹介します。会場では、貝合わせ、盤双六(ばんすごろく)、投扇興(とうせんきょう)の三種類の遊びをそれぞれ体験することができます。まず貝合わせ。同じ貝の貝殻しか合わない二枚貝(蛤)を用い、神経衰弱のように貝殻を合わせる遊びです。まず二つのグループに貝を分け、めくる方を花びら型に並べておきます。最初の人は、片方の貝殻を選び、貝の形や模様を頼りにして花びら型に並べた方から貝をめくって合わせていきます。

この時、貝の内側を見ない見せないようにして、貝を合わせるのがポイント。見事に貝が合えば周りの方は「お見事~!」と言ってくれます(笑)そして合わさった貝を開けば、内側には源氏物語などの雅な絵が登場し、皆で見せあって楽しめるという仕組みです。一方、貝が合わなければ「ごめんあそばせ」と言って、合わせる元の貝を隣の人に渡します。また、手を選ぼうとした貝に添えたところで、やっぱりやめて別の貝にするお手付きもありですが、その際は「お許しあそばせ」と謝るのだそうです。ひいな遊びの中では、小さな子どもでもできる遊びだからか人気を集めていて、以外と子どもの方が、次々に合う貝を見つけていきました。

次に盤双六(ばんすごろく)。昨年の大河ドラマ「平清盛」では、清盛と後白河上皇との間の駆け引きが盤双六に例えられ、よく登場していました。盤双六の起源はインドで、古くから日本に伝わって、奈良時代の宝物を今に伝える正倉院にも残されています。勝負遊戯がなかった日本では大流行し、賭博などにも用いられたため禁令も出されるほどでした。平安時代になると賭博遊戯はいちおう収まって、殿上人の遊びとして清盛の場面へとつながります。

その後の盤双六はというと、鎌倉時代には再び上下の区別なく賭博双六が大流行。物的財産のみならず、城や家臣、女房から娘まで、ありとあらゆるものが賭けられました。しかし室町時代には衰え、遊戯の増えた江戸時代になると双六の調度も美術的なもへと変わり、上流階級の遊びとなります。こうして、江戸中期にはほぼ廃れてしまい、かわりに現在の双六に繋がる「絵双六」が流行し始めました。

歴史の流れの中で一旦は消えたかに思われた盤双六。ただ、京都では尼門跡寺院に細々と遊び方が伝わっていて、昭和のころからその遊び方を後世に伝えていこうという動きが出、奇跡的に「日本最古の遊戯」が現代にも伝わっています(ただし、昔のものと同一の遊び方かは不明)。ひいなまつりでは、様々ある遊び方のうち、どの遊びをしていたかはよく見ていませんでしたが、子どもでも簡単にできるようなやり方で、サイを振って石を進めていました。竹筒でサイを振るときの独特の音がよいものですね。

最後の一つは、投扇興(とうせんきょう)。舞妓さんとのお座式遊びとしてご存じの方もおられるかもしれません。これまでの二つに比べると歴史的には最近の、江戸時代からの遊びです。「枕」と呼ばれる長方形の桐の台の上に、「蝶」と呼ばれるイチョウの葉の形をした的を乗せ、やや離れたところから的を狙って扇を放ち、蝶と枕と扇とが作り出す形で点数を決めて競うという遊びです。点数の計算は各流派によって様々ですが、ここでは源氏物語にちなんだ名前で点数が計算されていました。

実際にやってみると、これがなかなか難しいよう。「蝶」にはほとんど扇が当たらず、上手に投げないと、そもそも的に届かないこと多いです。また台である「枕」に扇が当たると罰として過料が付き、点数がマイナスされてしまいます。ただ、このようにすぐには上手くはできないからこそ、遊びとして好まれたのでしょう。今回も、皆さんとにかく的に当たるようにと、目が真剣でした。こうして普段は味わえない雅な遊びに触れられるのも「ひいなまつり」の魅力ですね。なお、「ひいな遊び」の会場も混みあっていますので、優先度を決めて挑戦してみるのがよいと思います。次回は「ひと雛」などの様子をご紹介します。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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