醍醐寺 秀吉ゆかりの巨木の枝垂れ桜


醍醐寺の早咲き桜が見ごろを迎えています。秀吉が花見をしたことでも知られる醍醐寺の桜は京都屈指の巨木ぞろい。初めての方は圧倒されること間違いなしです。

京都はソメイヨシノの満開が近づいてきました。恐らく、明日(30日)にも気象台から発表があるのではないでしょうか。ここまで咲き進んでくると、京都のどこへ行っても桜を眺めることができますので、あまり場所を選ぶ必要はなくなります。人やお店の多い少ない、天気や気温などをみて、好みの場所に出かけてみるのもよいでしょう。

一方、早咲き桜は今週末が見納めとなるところもありそうです。近衛邸跡や本満寺、大山崎山荘美術館庭園など、早咲きの枝垂れ桜は散り始め、場所によっては桜吹雪となっています。こうして徐々に桜は入れ替わっていきますね。今週末はいち早く春の訪れを告げてくれた早咲き桜の最後の雄姿を眺めに出かけてみるのもよいでしょう。今回ご紹介する醍醐寺も早咲き桜が見事です。昨日見た感じでは、今週末までは大丈夫そうで、来週初めも見られるかもしれません。醍醐寺の枝垂れ桜は、とにかく巨木ぞろいであることが特徴です。

醍醐寺の創建については、以前上醍醐を紹介する記事の中で書いていますので、そちらをご覧ください。醍醐寺を創建した聖宝の死後、醍醐天皇の子である朱雀天皇によって下醍醐に五重塔が建立されました。実は、この塔が奇跡的に現在も残っていて、往時の面影を今に伝えています。下醍醐では応仁の乱によってこの五重塔以外はすべて焼失し、衰退の道をたどっていました。

衰えゆく醍醐寺を復興に繋げたのが義演(ぎえん)です。義演は天下人・豊臣秀吉の援助を受けて、次々と伽藍を復興することができました。秀吉は天下人として関白の座に就きますが、実は秀吉の前任の関白・二条昭実は、義演の実の兄にあたるのです。二条家は秀吉に関白を譲って恩を売った形となったわけです。こうして伽藍の復興のみならず、太閤検地の折りには醍醐寺の困窮を訴え、替地を獲得してしまうほどでした。義演は信仰的にも秀吉に近づき、朝鮮出兵に際し祈祷を行っています。

秀吉と醍醐寺といえば「醍醐の花見」が知られます。秀吉はその前年にも醍醐寺で桜を見ており、この時に翌年の花見を考えていたのかもしれません。翌年2月に下見に訪れるとすぐさま準備に取り掛かかり、下見の4日後には近畿一円から700本もの桜を集め、その翌日には桜道が築かれています。さすが秀吉、なんでも仕事が早いですね。この花見は北野大茶会とは違って内々のみで行われ、伏見城から醍醐寺まで柵が設けられ、一般の人々は見ることができない花見でした。

秀吉はお付きの女性たちを驚かせ、幼い秀頼にも美しい桜を見せたかったのでしょうか。花見には秀頼の後見人としての意味で前田利家とその夫人(まつ)を招いています。経済的にも京都を潤す目的があったともされ、秀吉なりの考えが色々とあったのでしょう。一方で、そのころの秀吉は朝鮮出兵を行っていて、多くの武将たちは故郷を離れて戦っていたという事実もあります。かの国の人々も大いに苦しんでいた中で、花見という遊興にふけっていたことは、賛否のあるところです。

醍醐寺に現在ある巨木の枝垂れ桜は、醍醐の花見で集められた桜の子孫(孫)とされ、中でも霊宝館にある醍醐深雪(みゆき)桜と呼ばれる桜が最大の巨木となっています。樹齢はなんと180年。佇まいも美しく、高い人気を誇ります。実はこの桜は霊宝館の休憩室からソファーに座って眺めることもできます。忘れずに休憩室を覗いてみて下さい。大いに感動できることでしょう。

霊宝館の庭には、京都最大とされるソメイヨシノの巨木もあります。こちらは樹齢100年を超えるのだそう。ソメイヨシノは60年で寿命を迎えるといいますが、これも日頃の手入れのたまものなのかもしれませんね。霊宝館では他にも大きな枝垂れ桜を何本も見ることができます。もし醍醐寺以外の場所にあれば、どれもさぞ注目される名木となっていたであろう立派な桜ばかりです。その見事さは、とても私の写真だけでは伝えきれませんので、是非現地でご覧になって頂きたいと思います。なお、霊宝館では薬師如来像や五大明王像など、数多くの国宝や重文の文化財を目にすることもできます。

醍醐寺の拝観エリアは、霊宝館、三宝院、伽藍の3か所に分かれています(3か所拝観で1500円)。そのどれもが素晴らしく捨てがたいのですが、桜に限ってどれか一つをとなれば、個人的には無理やり、霊宝館→三宝院→伽藍と順位をつけるでしょう。ただ、決して大差があるわけではなく、あくまで桜に限ってのことです。

三宝院も入ってすぐの桜が素晴らしい。醍醐寺の公式では「太閤しだれ桜」と呼ばれていますが、その中でも画家の奥村土牛が描いた幹が二本に分かれた特徴的な桜は、通称「土牛の桜」と称されます。いやはや、この桜も本当に見事!大きさもさることながら、形や枝ぶりも美しい。画家が絵に描きたくなるのも頷ける桜です。

三宝院には秀吉が自ら手掛けた庭があり、国の特別史跡・特別名勝という庭の最高ランクに属しています。書院の襖絵も必見ですが、建物・庭園ともいずれも写真を撮ることができませんのでご注意ください。土牛の桜や憲深林苑はOKです。三宝院の庭には、天下人の間を渡り歩いた藤戸石があり、その上には密かに秀吉を祀っていた社もあります。醍醐寺を復興した義演は、徳川の世に変わっても秀吉の恩は忘れなかったのです。なお、現在、国宝・表書院の内部が拝観できることに伴って拝観順路が従来と変更されており、宸殿にある天下の三名棚の一つ「醍醐棚」は見ることができませんのでご注意ください。

三宝院で桜の時期に忘れてはいけないのが、憲深林苑(けんじんりんえん)です。三宝院の玄関横からさらに奥へと進んで下さい。こちらにも見事な桜がそろい、雨の日でなければ野点のお茶席も登場します。桜に囲まれてお茶を頂けば、秀吉の気分に少し近づけるかもしれませんね。

金堂や五重塔がある「伽藍」のエリアにも立派な桜がそろっています。ですので、できれば時間と予算を持って全てを見て頂きたいところです。金堂は秀吉が紀州湯浅の満願寺から本堂を移築したもので、なんと無理やり取り上げたといわれています。五重塔は京都府下最古の建造物で、平安時代の951年に創建されました。下醍醐は応仁の乱の兵火でこの五重塔を除いて全て焼失していますし、塔という落雷にもあいやすい建物が今も現存していることはまさに奇跡としか言いようがありません。桜の時期は、五重塔と桜を一緒に写真に収めることもできます。

伽藍を奥へと進めば、弁天堂があります。池に架かる橋も絵になり、池のわきには桜も咲いています。秋は紅葉が美しい場所ですが、桜の時期もなかなかです。このように桜の時期の醍醐寺は巨木の桜と立派な建物やお庭を一緒に楽しむことができる場所です。巨木の桜は早咲きのため、見頃は来週前半にかけてまでとなりそうですが、ソメイヨシノはこれから満開を迎えてきます。4月14日には太閤花見行列も行われます。今年は桜の進みを見ると、そのころに桜は残っていないかもしれませんが、行列だけでも十分華やかです。醍醐の桜、京都でも指折りの見事な桜ですので、是非ご覧になってみて下さい。

お知らせ

桜を巡る散策を「らくたび」さん主催で行います。詳細はこちらをご覧ください。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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