甘南備寺 前世を告げた薬師如来

甘南備寺
今回は京都の南、京田辺市にある甘南備寺(かんなびじ)をご紹介します。

甘南備山への道甘南備寺は、近鉄の新田辺駅やJR京田辺駅と一休寺との中ほどにあるお寺です。ただ、普通に歩いていてはたどり着かない場所で、あえて甘南備寺を目的にして歩いていく必要があります。「かんなび」という言葉を聞いて、すぐに「かんなび山」を思い出す方もおられるかもしれません。日本各地にかんなび山があり、「かんなび」は「神南備」とも「神奈備」とも書かれるように、神が宿る山として古代から信仰されていた山です。

神が宿った石 薪神社京田辺にも甘南備山(標高217.5m)があります。ちょうど生駒山系の最も北に位置して辺りよりも高く、神聖なものを感じる山だといえるでしょう。学者によっては平安京の南の基点をこの甘南備山に求める説もありますし、近世まで女人禁制の山でもありました。現在も山頂付近には神南備神社がありますが、かつてのご祭神は月読命(ツクヨミノミコト)であったともいわれ、その神が宿ったという石が一休寺近くの薪神社に移されています。

甘南備寺その神南備神社付近にあった神宮寺が甘南備寺です。創建は、奈良時代の僧・行基によると伝わる古い歴史を持つお寺。実は、平安時代末期に成立した今昔物語集にも甘南備寺は登場し、その話がなかなか面白いのです。甘南備寺がまだ甘南備山の山中にあったころ、寺に一人の僧が住んでました。僧は日夜、法華経を唱えて修行をしていましたが、やがて山中にある不便な寺院ではなく、都の大きなお寺に移りたいと思うようになるのです。そしてついに寺を出て都へと行く決心を固めた日の夜、僧の夢の中になんと寺の本尊である薬師如来が現れました。

甘南備寺「おまえの前世は、この寺の縁の下にいたミミズであった。それが、先の住職が毎日法華経を唱えるのを聞いていたから、現世では人間に生まれ変わることができたのだ。そのことをゆめゆめ忘れるでないぞ。」薬師如来はこう告げていったのです。夢から覚めた僧は、都へ行くのをやめて甘南備寺にとどまり、熱心に法華経を唱えて次は浄土に生まれ変わることを願ったと、今昔物語集には書かれています。前世がミミズとはユニークな話ですね。

甘南備寺の紅葉ご本尊が夢に現れることで寺は荒廃を免れましたが、やがて応仁の乱などを経て、今度は本尊の力も及ばず江戸時代のはじめには寺はすっかり荒れ果ててしました。しかしそれを嘆いた地元の村人によって山から本尊などが移されて、現在の黄檗宗の甘南備寺として生まれ変わりました。

甘南備寺 奉納された石夢に現れたという薬師如来も現在の甘南備寺にも伝わっています。薬師如来像は右手や足は修復されていますが、他は平安時代の造りで、特に耳の病に霊験あらたかなお薬師様として地元では厚く信仰を集めています。病が治ると、穴の開いた石を奉納する慣わしがあり、本堂にはいくつもの穴あき石を見ることができます。このように面白い物語を秘めた甘南備寺。一休寺を訪れる際には立ち寄ってみてもよいでしょう。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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