洛西の竹林 竹の径


京都の竹林といえば、嵯峨野が最初に名前があがりますが、洛西には他にも竹林が美しい場所が多く、向日市にある竹の径(みち)もおススメです。

洛西は、タケノコの産地としても知られ、美しく整備された竹林が向日市から長岡京市にかけて見られます。この竹林の景観を保全するため、2000年頃から環境整備(放置竹林対策・不法投棄予防)を行って、向日市特産の孟宗竹を使って整備されてきたのが、全長1.8kmにも及ぶ「竹の径(みち)」です。この道、歩いていると本当に気持ちがよく、先の見えない竹林の間を抜けて非日常の空間へと誘われていくようです。竹の径には、各種の竹垣もあって趣を添えています。

実はこの竹の径は西ノ岡(向日丘陵)と呼ばれる高台にあって、地図で見る以上にそこへの道のりは険しいです。向日市側から竹の径の南端へと向かう途中には、なんと道路勾配が「30%」の看板がありました。鷹峯の光悦寺の奥から吟松寺(原谷)方面へと下りる坂で25%、深泥池から円通寺へと抜ける坂も同じく25%ですので、それらをしのぐ激しい坂道。無謀にも自転車で挑んだ私は、ひっくり返りそうになりました。竹の径まで行ってしまえば平たんで、坂道の疲れを癒してくれるには十分な美しさではあるものの、たどり着くまではある程度の心づもりを持って行かれるとよいでしょう。

竹の径、これほどの美しさの割りに、その行き難さからか休日の昼間でも人通りは非常に少ないです。そこでよく使われるのが、各種のロケ。自動車のCMでも竹林が絡むシーンで使われるそうで、さらにはサスペンスや時代劇などドラマでも、京都らしい風景として登場するそうです。美しい竹林は、地元の皆様のたゆまぬ努力があってこそ保たれるもの。今後も、向日市の地域振興に一役買ってほしいですね。

向日市といえば、竹の径一帯は「物集女」という地名です。「ぶっしゅうおんな」ではなく、「もずめ」と読めましたでしょうか。大原女(おはらめ)や白川女(しらかわめ)、桂女(かつらめ)のように、京へ行商に出た女性が関係しているかと思いきや、その由来は、大阪の大仙古墳(仁徳天皇陵)があることでしられる百舌鳥(もず)から移住した、5世紀ごろの豪族に由来するといわれています。5世紀は古墳時代で、物集女には古墳が多いのも特徴。竹の径にも寺戸大塚古墳があり、見事な三段墳丘を確認できます。

竹の径を進んで行くと、やがて京都市洛西竹林公園にたどり着きます。実は竹の径は、途中から京都市と向日市との境界の道になり、行政区分も少し複雑。京都市が管理する洛西竹林公園も非常に美しい公園ですので、また次回以降に詳しく書く予定です。この公園の中には、京都の歴史にある程度詳しい方には、是非現地で見て頂きたい意外なものもありますよ。なお、竹の径や洛西竹林公園では、例年10月20日頃に「竹の径・かぐやの夕べ」というライトアップイベントが行われています。以前ブログにも書いていますので、よろしければご覧ください。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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