サツキ咲く正伝寺

サツキ咲く正伝寺
先日、サツキ咲く正伝寺を訪れました。

サツキ咲く正伝寺正伝寺は数ある京都のお寺の中でも、お庭の美しさは別格だと個人的に思うお寺です。このお寺にいると、聞こえてくるのは木々のざわめき、鳥のさえずり、基本的には自然の音ばかりです。自動車の音はもちろん、人も少ないため声すら聞こえてこないこともしばしば。遠くには比叡山を借景にして、手前には白砂とサツキの刈り込み。比叡山にかかる雲を何時間でも見ていられますね。

サツキ咲く正伝寺私が始めて訪れたのは10年以上前の学生時代。以来多くの友人を連れてきました。私の「とっておき」ともいえる場所です。春の紅枝垂れ桜、初夏のサツキ、初秋のお月見、秋の紅葉、冬の雪景色。四季折々の美しい風景に出会えるその場所に、今でも時々訪れてはホッと一息ついています。正伝寺は血天井でも知られ、上を見上げると手形足形は見つけることができるでしょう。何度も通えば気にならなくなりますが、初めての方は心づもりをしておいて下さい。

サツキ咲く正伝寺正伝寺の方丈は伏見城の遺構と伝わり、江戸時代には徳川家光の御成(おなり)御殿としても使われたため、葵の御紋の飾り金具も見られます。伏見城に移る前は聚楽第にあったとする説もあり、豊臣と徳川の手を経て伝わっている建物となります。本尊の釈迦如来像を安置する真ん中の部屋は、折上小組格天井(おりあげこぐみごうてんじょう)で、格式の高さを計り知ることができます。襖絵は狩野山楽の山水図で重要文化財。あまりにも普通に襖がはまっているため、それが貴重な文化財であることに気がつかない方もおられるようです。このように正伝寺は建物も素晴らしく、小さいお寺ながらも密度の高い「京都」に出会うことができるのです。

サツキ咲く正伝寺さて、お庭は江戸時代初期の小堀遠州の作とも伝わります。比叡山を借景にしたお庭はで円通寺も見事ですが、個人的には正伝寺が好み。時々刻々と変わる雲を眺めて3時間も過ごしていたこともありました。今回訪れたのは日には、ちょうど最も南の刈り込みのサツキが綺麗に咲いていました。正伝寺の場合は南に日陰となる茂みがあるため、北のサツキの方が進みが早く、南が最後まで残る傾向にあります。サツキの時期にも何度も訪れてきましたが、やはり華やかでよいものですね。

サツキ咲く正伝寺余談ですが、京都でサツキといえば、詩仙堂や智積院が有名です。ただ、実は多くの社寺にサツキは植えられているので、詩仙堂や智積院が抜きん出てすごいとは言えない、というのが私の意見です。先日ご紹介した清水寺や八坂神社、平安神宮に安楽寺、等持院などなど、サツキの美しいお寺は至る所にありますので、自分だけのサツキスポットを探してみても面白いかもしれません。

サツキ咲く正伝寺正伝寺の魅力の一つは、方丈の障子を自由に開け閉めして、好みの「額縁」でお庭を楽しめることです。大勢でごったがえすことはまずありませんので、自らの感性の求める通りに風景を切り取ってみて下さい。その日の天気やお庭の状態でも最適な場所は変わるはず。私も毎回異なった風景を眺めて楽しんでいます。自然に囲まれた静かな正伝寺。機会があればゆったりと訪れてみて下さい。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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