身代わりとなった歯型地蔵

歯型地蔵
千本鞍馬口のバス停近くに歯型地蔵という小さなお地蔵さんが祀られています。

京都の地蔵盆京都では各町内ごとにお地蔵さんや大日如来が祀られていることが多く、8月の縁日である「地蔵盆」や「大日さん」では各町内で趣向を凝らした行事が行われているのが印象的です。そんな数あるお地蔵さんの中には「○○地蔵」と呼ばれて、固有の伝承を伝えているところもあります。今回ご紹介する歯型地蔵もその一つ。千本通に面した千本鞍馬口バス停(東側)のすぐ北側にあります。

大日さんかつてこの辺りには川が流れて橋がかかり、下にはお地蔵さんが祀られていました。その近くに一組の夫婦が住んでいました。夫は大工で仕事一筋の真面目人間。近所でも評判で奥さん連中からもほめられるほどです。しかし、あまりに評判が良すぎるため、妻は夫が浮気をしたり、他の女に取られやしないかと気が気ではありませんでした。そんな心配が高じて、夫の帰りが少しでも遅れると自分から迎えに行くほどの気の使いようでした。

歯型地蔵ある日、夕方から雨が降り出しました。夫がさぞ困っているだろうと思った妻は、傘を持って迎えに出ました。ところが、向こうからやって来るのは美しい娘とあいあい傘でやってくる夫の姿。逆上した妻は、夫に掴みかかります。驚いた夫は急いで橋の下に逃げ込むと、お地蔵さんの影に隠れました。やがて追いついてきた妻は、言葉より先に肩にガブリと噛み付いたのです。

歯型地蔵ところが、夫だと思って噛みついたのはなんとお地蔵さん。しかも歯が食い込んで離れなくなってしまいました。妻が苦しんでいたところ、たまたま通りかかった老僧がお経を唱えることで歯は外れたのですが、妻はそのまま息絶えてしまったということです。以後、お地蔵さんは「歯型地蔵」と呼ばれ、女性の嫉妬を戒めたと伝わります。また、夫の身代りになってくれたので歯痛平癒の信仰も集め、今でもお地蔵さんの左肩には歯型といわれる窪みが残っているそう。小さなお地蔵様にも、興味深い伝承が残されています。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。


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