涌泉寺 松ヶ崎題目踊り

松ヶ崎題目踊り
8月15日と16日に、松ヶ崎の涌泉寺松ヶ崎題目踊りが行われました。

松ヶ崎題目踊り松ヶ崎題目踊りは「日本最古の盆踊り」ともされる由緒ある踊り。日蓮宗のお題目である「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう」を歌うように唱えながら奥ゆかしく踊っていきます。五山の送り火の「妙法」が灯される松ヶ崎ですが、この送り火も南無妙法蓮華経の「妙法」からきていて、南無妙法蓮華経には、日蓮宗で最も重んじる「法華経」に帰依をするという意味があります。

涌泉寺今から700年ほど前の鎌倉時代末期、日蓮の孫弟子である日像(にちぞう)上人は、日蓮から託された京都布教の使命を帯びてやってきます。しかし、日蓮宗は鎌倉新仏教の中でも後発の宗派。すでに他宗を信じきっている人たちがほとんどの中で、新たに日蓮宗を広めていくのは並大抵のことではありませんでした。他宗派からの排斥運動もあり、都を3度も追放されるなど、辛酸をなめながらも都の周辺部から徐々に教えを広めていきます。

松ヶ崎題目踊り日像は、辻説法も行いましたが、寺の住職と宗論を交わし論破していくことで住職を日蓮宗に改宗させ、その寺がある村の住民にも広めていくという方法を取りました。他宗の矛盾を付き、日蓮宗の正しさを納得せしめるだけの理論と卓越した話術があったことは想像に難くありません。京都近郊では、松ヶ崎、向日市の真経寺、深草の宝塔寺(極楽寺)などが日像によって改宗し、京都の他にもそうした由緒を持つ寺があります。

松ヶ崎題目踊り洛北・松ヶ崎は、比叡山に近い立地もあって、もとは天台宗の強い場所として比叡山三千坊の一つに数えられた歓喜寺がありました。しかし、歓喜寺の住職であった実眼(じつげん)が日像との法論によって日蓮宗に改宗、寺号も妙泉寺に改称しました。実眼は、松ヶ崎村の人々にも日蓮宗を説き、さらに旧暦7月14日~16日の3日間、日像上人を招いて説法をしてもらうことによって、最終的には村人が全員、日蓮宗へと改宗するにいたったのです。その数は470名といわれます。

松ヶ崎題目踊り実眼はそれがあまりに嬉しかったらしく、喜びのあまり飛び跳ねて自ら太鼓を打ち鳴らし、南無妙法蓮華経を唱えながら音頭を取り始めます。居合わせた住民たちも南無妙法蓮華経と唱えながら踊りはじめ、こうして「松ヶ崎題目踊り」が始まったと伝わります。また、五山の送り火の「妙」は、村民が改宗した時、日像が杖で「妙」の字を書いて点火したことに由来するともいわれています。

松ヶ崎題目踊りただ、松ヶ崎の日蓮宗はその後も順風だったわけではなく、1536年に起きた天台宗との戦い「天文法華の乱」では、比叡山に近いこともあって真っ先に攻撃を受け、寺も焼かれたどころか、改宗の腹いせに村がことごとく焼き払われたといいます。しかし、この事件以降、外来者を入れない、村の掟を厳しく守るなど、村人の団結は強まっていきました。妙泉寺は1575年に再興。大正7(1918)年には、松ヶ崎小学校の敷地拡張に伴って、現在地にあった本涌寺と合併し、元の妙泉寺と本涌寺のそれぞれの名をとり涌泉寺と改称して現在に至っています。(今回は本涌寺の檀林の話は割愛します)

本堂での法要前置きが長くなりました。松ヶ崎題目踊りは、8月15日の夜19時頃から行われます。まず本堂で法要を行い「南無妙法蓮華経」の声も聞こえてきます。法要が終わると太鼓をたたいて最初の踊りをおどり、その流れで「南無妙法蓮華経」を歌うように唱える松ヶ崎題目踊りが始まります。衣装は「妙法」がデザインされていて、統一感がありました。私の手元の古文献では、踊りの歌は「題目七編返し」「一代諸行の歌」「壇陀音頭」があると書かれていますが、今も同様かはわかりません。

松ヶ崎題目踊り踊り手たちは歌い手を囲むように大きな円を作り、手には扇子を持って回転させ、体は前かがみになって、ゆっくりと進んで行きます。歌い手たちは年配の方が多く、東に男性、西に女性が集まって、それぞれが掛け合うように「南無妙法蓮華経」などの節を歌いあって行きます。いずれもたいへんよい声です。松ヶ崎題目踊りは「聴く踊り」ともいわれますので、是非動画でその様子をご覧になってみて下さい。

さし踊り題目踊りは、江戸時代のはじめに後水尾天皇が天覧したこともありました。時代をこえて、今でも脈々と受け継がれていることが奇跡のようにも思えますね。題目踊りが終わると、続いて「さし踊り」が行われます。こちらは一般の方も参加することができる盆踊り。洛北一帯に同様の踊りが伝わっています。題目踊りなどは、16日の五山の送り火の終了後にも行われています。機会ありましたら、実際にご覧になってみて下さい。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です