嵯峨の送り火 大覚寺 宵弘法

大覚寺 宵弘法
8月20日に、大覚寺宵弘法が行われました。

大覚寺からの月大覚寺の宵弘法は「嵯峨の送り火」とも呼ばれる行事で、大沢池に送り火が灯されて、五山の送り火で帰りそびれたお精霊(しょらい)さんを送るといわれています。「宵弘法」は、弘法大師が除災招福を祈念して始めたと伝わり、毎年1回執り行なわれています。大覚寺は夕刻には無料公開され、大沢池には祭壇が設けられて、送り火を待つ方が集まります。

北嵯峨高校吹奏楽部午後6時からは宸殿(しんでん)にて、北嵯峨高校吹奏楽部による演奏が行われています。親しみのあるポップな曲の演奏で、聴き応えがありました。人数が多いので迫力もあります。日ごろからたくさん練習をされているのでしょう。宸殿前の庭には席も設けられて、多くの方が聴き入っていました。

護摩焚き同じく午後6時からは、五社明神の前で護摩焚きも行われています。お寺の中にある鎮守社は神仏習合時代の名残です。神社の中にあるお寺は、神宮寺と呼ばれましたが、明治初期の廃仏毀釈によって姿を消しました。一方、お寺の中にある鎮守社は反対に大切にされて、現在に残っているところが多いです。ちなみに、五社明神は時代劇のロケでよく使われる場所でもあります。宵弘法では、護摩壇が設けられて僧侶による護摩焚きが行われています。

大沢池に浮かぶ灯籠辺りがだんだんと暗くなり始める頃、大沢池には船で灯篭が浮かべられていきます。この時期、大沢池の北東方面には蓮が群生して茂っていますので、実質的な池の大きさはいつもより小さくなっています。灯篭は池の中に設けられた祭壇や送り火の周りに浮かびますが、北西の風に流されて、程なく南へと流れていってしまいました。なかなか均等には浮かんでくれませんね。

施餓鬼棚午後7時から嵯峨の送り火の法要が始まります。この法要は施餓鬼会(せがきえ)で、京都各地でお盆前後の時期に行われる法要です。施餓鬼は「餓鬼に施す」と書きます。餓鬼道は死後に生まれ変わる六つの世界の一つで、全ての食べ物が炎になって燃えてしまうため、常に空腹に苛まれるという非常に厳しい世界です。中国仏教では、旧暦7月に僧侶を手厚くもてなすと餓鬼道に落ちた亡者が救われるとされ、純粋な仏教行事としてお盆の時期に施餓鬼会が行われています。

大覚寺 勅使門と月一方、先祖が冥界から帰ってくるというお盆は、日本独自の神道の考え方に基づいたもので、先祖に供物をささげることと、餓鬼に施すことは、本来は別な行事です。が、施餓鬼会がお盆の時期に行われることが多いため(これにも由来がありますが、今回は省略)、関連があるように思われています。お盆は日本独自の風習で、仏教神道が入り混じり、さらには宗派によって供養の仕方が異なるなど、なかなか複雑な信仰形態となっています。

大覚寺 宵弘法さて、法要が進むと、大沢池の中に設けられた送り火に、船から火が灯されます。見る見るうちに大きくなった炎が、勢いよく火の粉を舞い上げ、その光は水面にも反射して辺りは一気に明るさを増します。まさに先祖を残らず送る炎にふさわしい、勇壮さを感じられるでしょう。

大覚寺 宵弘法加えて、今年は満月間近の月が昇り、たいへん美しい光景を眺めることができました。五山の送り火も、かつては旧暦の7月16日に行われていて、旧暦の16日はほぼ満月の月が送り火に合わせて昇ってくるものでした。少しタイミングは異なりますが、月と送り火を同時に眺めるという素晴らしさを垣間見た思いがします。

大覚寺 宵弘法法要が終わると、人も少なくなってきて、自由に辺りを動けるようになるでしょう。送り火はまだ燃え続けていますので、思い思いの構図で写真を撮る方もたくさんいました。境内の御影堂前の石舞台では、灯明も献じられています(有料500円)。こちらも幻想的な明かりで、お盆の終わりを思わせてくれました。

大覚寺 宵弘法夜の大覚寺は何度訪れても、独特な雰囲気があると感じます。仏像や襖絵、建物、信仰においても見るべき(話すべき)ものが多く、時代劇ネタも含め、ガイドも案内する話に全く困ることのないお寺です。また来月の「観月の夕べ」に際して夜間拝観も行われます。今年は天候に恵まれて、見事な月をまた望めるとよいですね。宵弘法の様子は写真だけではお伝えできませんので、是非動画でもご覧ください。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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