台風18号 増水した桂川 浸水した嵐山

激しく増水した桂川
台風18号による大雨によって、桂川が激しく増水し、渡月橋付近の嵐山が浸水しました。

激しく増水した桂川今回は桂川(保津川・大堰川)の水位が上昇し、渡月橋周辺などで浸水被害が発生しました。桂川は京都市近郊では宇治川・木津川と並ぶ大河川ですが、古くから水害を起こす暴れ川として知られ、平安京の右京が衰退したのは桂川の氾濫の頻発が要因ともされます。鴨川は直線的な流路で、上流部と下流部の高低差があり河川勾配が急ですが、桂川は嵐山が標高35m、鴨川との合流点付近で15mと、その傾斜は鴨川の3分の1程度で緩やかな河川です。土砂を流す量や、増水傾向なども含め、鴨川とは水害の性質に様々な違いがあります。

激しく増水した桂川桂川の流域は京都の北部にありますが、亀岡の出口からは狭い渓谷(保津峡)を通るため、排水不良が起きやすく、亀岡も水害に悩まされてきました。その上流部には日吉ダムがあり、亀岡までの流域の約40%をカバーしています。水害時は毎秒150㎥の放流に抑える取り決めがなされていますが、今回の水害でも、雨が収まり河川水位が低下に転じ始める16日12時まで目いっぱいダムに水を貯め、150㎥の放流量を守っていました。そのことをご存じないのか「ダムの放流によってあそこまで水位が上昇した」といったニュアンスで発言するキャスターや、ネットの情報を見かけたことが残念です。事実はむしろ反対で、日吉ダムが放流を押さえてくれたからこそ、これだけで済んでいるのです。詳しくはダムのデータを見て頂ければ一目瞭然です。なお、日吉ダムの洪水調節について詳しく知りたい方は、こちらの論文をご覧ください

川沿いの浸水した家屋ダムの満水に伴って、16日12時からの放流量を増加させましたが、原則は流入量と流出量を均衡させて、大幅な放流は行わず、現在は150㎥の放流量を保って、少しづつダムの水位を低下させていますが、このブログを書いている時間(17日21時)でも貯水率はまだ340%を超えていて、ダムのデータを見れば、その奮闘ぶりがわかります。日吉ダムは桂川の洪水軽減に非常に大きな役割を担っているダムです。

川沿いの道路も冠水した今回の水害では、渡月橋のライブカメラ映像がKBS京都で中継され、橋のすぐ下まで水が来て、時間とともにその水が橋を乗り越えつつある様子に、多くの方が驚かれたと思います。私も強い衝撃を受けました。渡月橋のかかる嵐山は、桂川が山岳地帯から平地へと出る場所にありますが、橋の下では川幅が少し狭くなり、かつ観光スポットとしての嵐山公園や土産物屋も並ぶため川底が高く、川が水を流す量が少し減ってしまう個所でした。

雨が上がり、川の様子を見る人々私は安全に留意しながら三条通を通って嵐山に向かいました(ヘルメット、長靴、カッパ姿です)。気象予報士として、レーダーの状況から雨はそろそろ止み、河川水位の経過からこれ以上大きく上昇することはないと判断し、安全な範囲で水害の恐ろしさを伝えていくための行動です。他の方には、絶対にお勧めしません。桂川が近付くと、桂川から取水している西高瀬川が溢れていました。側溝から水が溢れる内水氾濫も起きていて、もしかすると家の下水からも水が逆流していたところもあったかもしれません。実際の浸水の現場を目の当たりにして、非常にショックでした。

冠水した道路桂川沿いも上流部から溢れた水が川沿いの道に沿って流れていて、一見すると、道路と川との境目がつかないほどでした。渡月橋に向かおうとする車はUターンを余儀なくされています。辺りに住まわれている方々は、雨が止んだためか続々と集まってきて、心配そうに桂川の濁流を見つめています。数社の報道のカメラも川沿いまで来て撮影していました。付近の旅館は浸水し、従業員の方も周りの様子を見るために出て来られていました。

避難していた船三条通から渡月橋方面に近づくことは不可能でしたが、浸水エリアは川沿いで土地の低いところに限られていたため、安全な道を周りこんで渡月橋の上流側まで向いました。宝厳院の辺りでは、事前に多くの船が陸の上に避難をしていました。桂川沿いには多くの地元の方が集まって、川の様子を眺めていました。渡月橋の辺りは完全に濁流にのまれ、いつもと同じ場所だとは思えないほど、信じがたい光景となっていました。川の水は時折、波のように岸に向かって流れてきましたが、やはり水位は少しづつ下がっているようで、浸水の範囲は徐々にせまくなっていきました。

激しく増水した桂川と渡月橋今回の大雨と増水によって、観光地嵐山をはじめいくつかのエリアで浸水被害を受けました。ニュースでも大きく取り上げられていて、被害にあわれた方の心中を思うと非常に胸が痛みます。一方で、誤解のないよう事実を書きますと、多くの社寺はほとんど被害が出ていません。桂川に近い天龍寺さえも被害はなく、通常通り拝観ができます。浸水範囲も川沿いに限られています。全体としては、十分に観光は可能です。特にこの先の秋の観光シーズンには、多くの方に足を延ばして頂き、被害から立ち直ったお店や旅館を訪れて頂ければと願っています。

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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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