11月2日・3日と、大修理が行われている知恩院の御影堂の修理現場が一般公開されました。
知恩院の御影堂(みえいどう)は、平成24(2012)年から大修理に入り、工期は平成30年までの予定です。現在は大きな建物が丸ごと素屋根に覆われていて、普段は直接その姿を目にすることはできなくなっています。今回の公開ではこの素屋根の中に入り、実際の修理現場で、大きな瓦やその柱、職人さんの見事な技術を間近で見学することができました。なお、毎月第一日曜日(年末年始を除く)にも、予約制で見学をすることができます。
知恩院の御影堂は、宗祖の法然上人の像(御影)を安置するお堂で、寛永16年(1639)に徳川家光によって現在のお堂が再建され、平成14年には国宝に指定されました。まさに知恩院の中心、本山の中心をなす巨大な建物です。300年ほど前の元禄期と、100年ほど前の明治末期にそれぞれ大修理を受けていますが、瓦の傷みが激しく、屋根の重みで屋根を支える部分にも歪みを生じるようになってきたため、この度、半解体を伴う大修理が行われることになりました。
現在は、屋根の瓦やその下地の板が剥がされ、屋根の骨組みが見えるようになっています。今回の修理では、可能な限りの材料は再利用するため、部材を痛めることのないように丁寧に解体作業が進められているそうです。屋根瓦は9万点もあり、しかも建物の大きさに合わせて通常のサイズより大きめに作られています。その重さを支えるために、屋根の先にはてこの原理を用いるなど構造に工夫がなされています。また、明治期の大修理ではさらに大掛かりな補強が加えられて、その際に入れられたボルトで固定されている部分も見ることができました。
この見学会は非常に人気があり、予約無しで入れるとあってか多くの人が訪れて、待ち時間は1時間以上でした。テーマパークの人気アトラクションのようですね。気長に待つと順番が回ってきて、建物の中にはヘルメットを着けて入っていきました。階段を上っていくと現れたのが、巨大な屋根。瓦をはがされ、露わになった骨組みですが、その1本1本が大きいです。江戸時代にどうやってこの高さまで太い柱を持ち上げたのかと思うほどで、この光景だけでも圧倒されます。
さらに驚くのは鬼瓦の大きさ。人の体よりも大きいものがいくつも並べられていました。特に屋根の最上部の大棟につけられていた鬼瓦が最大で、さすがに1枚瓦ではなく、9つのパーツを組み合わせて作られているそうです。こうした瓦の1枚1枚も、当時の職人の緻密で繊細な技術によって造られていることを感じます。
素屋根の内部では、職人さんの技術も紹介されています。大工から畳作り、瓦作り、石工など、建築に関わる様々な道具も見られ、実際の職人さんから直接お話を聞かせて頂くこともできました。今回の見学会は、待ち時間は非常に長かったですが、一度中に入ってしまえば時間制限はなく、滅多に見られない御影堂の姿と職人さんの技を満足するまで見せて頂くことができました。
御影堂の修理は平成30年までの長丁場。この先も、公開されるタイミングがあるかもしれませんし、京都では他の社寺でも修復は行われています。機会がありましたらこうした修復技術を間近で見られる機会に足を延ばしてみて下さい。なお、御影堂といえば知恩院の七不思議の一つ「忘れ傘」がありましたが、傘が老朽化していることもあり、今回は手を触れずそのままにしておくそうです。不思議は不思議のままがよいのかもしれませんね。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。