南座では11月30日から12月26日まで、吉例顔見世興行が行われ、京都の五花街の芸舞妓さんによる花街総見も行われました。
南座に「まねき」の看板が上がると、いよいよ師走という気持ちになります。紅葉で慌ただしかった中でも、季節は確実に進んで行きますね。京都では、来週末に初雪の可能性もありますので、最新情報にご注意ください。まねき看板は「隙間がないほど大入りになるように」との願いから、太く丸みを帯びた「勘亭流」という書体で、隙間なく役者の名を記した一枚板です。人が中へと入ってくるようにと、内向きに字がまとめられているのが特徴。全国でも、江戸時代以来の古式が残るのは南座だけです。
かつては芝居小屋と歌舞伎役者との契約は、プロ野球選手のように1年更新。もともとは長期契約で、その間は他の芝居小屋での出演もできなかったそうですが、それでは顔ぶれが単調になってしまうということで考え出された仕組みです。顔見世興行は、その年のその芝居小屋の顔ぶれを披露する、最も大切な興行であったわけです。元来は旧暦の11月初旬に行われていましたが、明治以降には新暦の12月(現在は11月30日~12月26日)に行われるようになりました。
12月初めには、京都の5つの花街の芸舞妓さんが、芸事の勉強を兼ねて顔見世興行を観劇する「花街総見」が日替わりで行われます。今年は2日が祇園甲部、3日が先斗町、4日が宮川町、5日が上七軒、週明けの9日が祇園東です。朝10時頃に南座の前に行くと、芸舞妓さんが集まり、中へと入っていく場面を見ることもできます。今年は宮川町の日に訪れてみました。
南座前は他の団体の集合場所にもなっていて大混雑でした。さすがに顔見世興行は人気がありますね。今年は、市川猿翁さん、市川猿之助さん、市川中車さんのトリプル襲名披露もあり、注目度はさらに高くなっているようです。12月には祇園の舞妓さんの花かんざしも「まねき」をモチーフにしたものに変わりますが、まねきには贔屓の役者さんのサインを入れてもらうのが習わしです。しかも2枚(2名分)あります。ザッと見たところ、今年はやはり先のお三方が圧倒的な人気でした。
南座に入っていく芸舞妓さんを見送った後、宮川町を自転車で通ってみると、別な芸舞妓さんの一段が南座へと向かって歩いて行かれるところに遭遇しました。恐らく同じ置屋さんの方々なのでしょう。やはり芸舞妓さんが集まって歩いて行く様子は見ごたえがありますね。貴重な場面に出会うことができました。さて、南座の顔見世興行は26日まで。今年も多くのファンを魅了して頂けそうです。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。