12月14日に、大石神社で山科こども歌舞伎が披露されました。
山科こども歌舞伎は2009年に始まって今年で5回目。寺西幼稚園の園児たちなどによる大変可愛らしい歌舞伎を見せて頂けます。12月14日は赤穂浪士が討ち入りをした日(旧暦)で、山科では「山科義士まつり」も行われています。山科こども歌舞伎の日程は、必ずしも12月14日とは限りませんが、今年はたまたま一致しました。12月14日に近い土日に行われているようです。
演目は「仮名手本忠臣蔵」の中から、見せ場のある場面を抜粋して行われます。上演開始は12時半からで、会場の大石神社の本殿前に入ることができるのは12時から。ただ、チケット(1000円)の販売は当日11時からで、チケットの購入順での入場となります。前の方などよい場所で見たい方は、早めにチケットを入手して、入場時間にもちゃんと集合していて下さい(来年以降は方法が変わるかもしれませんが)。ただ、席に座っての写真は撮影などは出来ず、撮る場合は立ち見で後ろや横からならばOKとなっています。
開始時刻になると会場はいっぱいで、空いているのは団体の予約席のみという盛況ぶりでした。まだ開催されてからの歴史は浅いですが、人気を集めている証拠ですね。子どもの役者さんたちはお練りをして境内に入ってきているそうで、大人の方に担がれながら入って来る子もいました。見事な時代装束に身を包んだ姿に、観客の声援も大きくなります。
最初は演目の見所などを簡単に紹介をする「口上」です。一番最初には京都新聞でも紹介をされていた障害を持った子が、見事な動きで挨拶を述べていき、見得を切る場面では拍手喝采でした。続いて、これまた可愛らしい子どもさんが二人登場して、見事な口上を述べて行きます。セリフは全て暗記をしているようで、5分はあろうかという長い内容を、丁寧にはっきりと、大きな動きと声で観客に届けていました。本当によく練習をしてきたのでしょう。舞台の最前列では、幼稚園の先生と思しき方が一緒に口を動かしてセリフをフォローしている姿も印象的でした。
そして、一番の見せ場である刃傷の場面へと変わります。動画もありますので是非ご覧になって頂きたいのですが、仮名手本忠臣蔵ですので、浅野内匠頭の名前は「塩冶判官高定(えんやはんがんたかさだ)」、吉良上野介の名前は「高師直(こうのもろのう)」となっている点にご注意を。高師直役の子は、セリフの言い方がよい意味で憎たらしく、素晴らしい悪役ぶり。観客の笑いを誘っていました。二人とも演技が素晴らしく、たいへん立派でした。
続いて「道行旅路の嫁入(みちゆきたびじのよめいり)」へと場面が変わります。こちらは、過去に演じたことがある小学生たちが参加している「山科こども歌舞伎塾」の子どもたちによる演目のようです。日ごろの練習の成果か、より所作が洗練された印象で、女形特有の女性らしいしぐさも見事にこなしていました。
最後は、「天川屋 見世先の場」。赤穂浪士を支援したとされる天野屋利兵衛(あまのやりへえ)をモデルにした、天河屋(天川屋)義平(あまかわやぎへえ)が登場します。捕り手に自らの子を人質に取られても動ぜず、「天川屋の義平は男でござる」の名台詞が見せ場です。観客もちゃんと分かっていて、その場面では大きな拍手が起こっていました。
こうして仮名手本忠臣蔵の名場面を見事に演じ切った子どもたちは、最後に舞台上に勢ぞろいをして人びとに頭を下げ、大きな拍手を受けていました。黒子の子も可愛らしく頑張ってくれました。その後、拝殿の前での記念撮影もあり、子どもらしい姿も見せてくれました。山科こども歌舞伎は、思っていた以上にレベルが高く、素晴らしいものでした。この先も長く、受け継がれていってほしいと思います。立派に演じきる子どもたちの姿は、機会がありましたら、是非現地でご覧になってみて下さい。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。