百人一首の殿堂「時雨殿」

時雨殿 持統天皇
渡月橋の北から川を遡って歩いて行くと時雨殿(しぐれでん)があります。小倉百人一首を「見て」「感じ」「学ぶ」、百人一首ミュージアムです。

時雨殿小倉百人一首といえば、子どものころに暗記したという方もおられるかもしれません。私も、小学生の時にかるた取りで1首覚えました。「山里は 冬ぞ寂しさまさりける 人目も草もかれぬと思へば」。今から振り返れば、小学生にしては渋い歌を選んだものです(笑)肝心のかるた取り大会では、あの独特の読み方がほとんど聞き取れず、覚えた歌も他の人に取られてしまい、成績が振るわなかったことを思い出します。

時雨殿小倉百人一首は、鎌倉時代の初めに活躍をした藤原定家(ていか/さだいえ)が、息子・為家の妻の父である宇都宮頼綱の求めにより、頼綱の別荘・嵯峨中院山荘の襖に貼る色紙に百首の歌を選んだことに始まります。定家は嵯峨野にそびえる小倉山の麓にあった「時雨亭(中院草庵/嵯峨野の庵)」という別荘で百首の歌を選び、天智天皇の飛鳥時代から鎌倉時代の初めの順徳院まで、1人1首を時代順に並べました。まさに和歌の「ベスト盤」とでもいうべきものです。江戸時代に入り印刷の技術が発達すると、かるたを通じて庶民にも広まっていきました。

時雨殿なお、定家が百人一首を選んだという時雨亭は、二尊院の境内最奥に遺構がありますが、常寂光寺にも石碑があり、厭離庵(えんりあん)も候補とされます。具体的な場所は定かではありませんが、定家が残した日記「明月記」の研究によると「少し山手にかかっていて、土地は乾燥しているが、雨のあとでは山から水が出て庭を洗う。水は西の垣より入って北へ流出し、その間船・筏を浮かべてよいほどの水量になる」場所であるそうです。

時雨殿 ミュージアムショップさて最近は、「ちはやふる」という競技かるたを題材にした漫画やアニメで、小倉百人一首も人気が出ているようです(私は読んだことがないので詳細は分かりませんが)。昨年夏は時雨殿でも「ちはやふる展」が行われていました。ミュージアムショップでは、関連グッズも置かれています。また、1月3日に八坂神社で奉納された「かるた始め式」も、大変多くの見物客で賑わっていましたが、こちらも「ちはやふる」の影響があったのかもしれませんね。

時雨殿 二階にて時雨殿の二階では、競技かるたの大会や練習が行われていることがあり、タイミングが合えば見学することもできます。私が訪れた日は、ちょうど練習が行われていて、しばしその様子を見させて頂きました。上の句が読まれると、一斉にバシッ!バシッ!と部屋に音が響いて行きます。記憶力のみならず、とんでもない瞬発力が求められそうです。

時雨殿一階の時雨殿の展示室の方は、百人一首の歌や現代語訳が書かれたパネルや、当時の装束の展示、歌合わせの場面をミニチュアで再現したものなどが並んでいます。歌仙人形という、歌人の人形も個性があって面白かったです。時雨殿に入る際には、百人一首のどれかの歌が書かれた入館券が渡されますが、その歌が日によって変わる「その日の歌」と一致すると記念品が頂けます。「その日の歌」は展示室で分かりますので、探してみて下さい。時雨殿はまさに京都らしい、雅さを感じられる空間です。近くには天龍寺や大堰川もあり、交通の便もよい場所ですので機会がありましたら、訪れてみて下さい。

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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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