東福寺の雪景色だけで3回目のブログです。それだけ魅力的で、しっかりと書いておきたいと思いました。まだまだ、泉涌寺に東寺、伏見稲荷、醍醐寺などなど貴重な雪の風景がありますので、恐らく2月いっぱいは寒々しい風景の写真が続くかもしれませんがご容赦を。時折、梅など明るい色彩の記事も挟みたいとは思います。二十四節気では「雨水」を過ぎ、京都も来週は気温が10℃を超えて暖かくなってきそうです。
さて、前回は東福寺の方丈庭園の雪景色を、前々回は臥雲橋から望む通天橋や境内の雪をご紹介しました。方丈庭園を眺めた後、通天橋と開山堂エリアへと入ってみました。方丈庭園とはまた別の有料拝観エリアです。東福寺は境内に洗玉澗(せんぎょくかん)と呼ばれる深い渓谷を持ち、そこにかかる3本の橋の内、真ん中の通天橋の周りは秋の紅葉がことのほか美しいことで知られています。
冬の楓は葉を落として寂しい雰囲気もありますが、雪が降ればこれまた大変美しい光景が現れます。紅葉シーズンの通天橋は凄まじい混雑ですが、さすがに雪の日は人が少なく、滅多に見られない価値ある光景を思いのままにカメラに収めることができました。それにしても雪景色は雄大で、京都の市街地にほど近い場所にありながら深い山中に入ったかのような不思議な感覚がありました。
通天橋を越えて階段を上って奥へと進めば開山堂(常楽庵)があります。東福寺は鎌倉時代の1236年から19年をかけて聖一(しょういち)国師を開山として創建されました。東福寺の開山堂は聖一国師が1280年に亡くなった場所とされ、境内の25ある塔頭の中でも重要な場所。江戸時代後期に再建された建物には、現在も聖一国師が祀られています。特徴的なのは2階部分の楼閣。伝衣閣(でんねかく)と名付けられており、京の五閣と言った場合は、金閣・銀閣・飛雲閣(西本願寺)・呑湖閣(どんこかく:大徳寺の芳春院)と並んで伝衣閣が入ります。
開山堂前の庭園は6月初めには皐月の花が咲き、白砂の庭園には市松模様が描かれています。ただ、この日は雪とあって、私が訪れた時には市松模様はほとんど埋もれてしまっていました。雪の量はなかなか難しいところですね。普段であれば庭の西側にある普門院の前に観光客が座ってゆっくりとお庭を眺めています。
開山堂エリアは行き止まりなので引き返し、少し通天橋の周りを歩いてみました。赤い色の愛染堂はやはり雪の中では色彩が目立って美しいです。新しそうに見えますが、室町時代の重要文化財の建築です。八角形の形も比較的珍しく、中には愛染明王が祀られています。
通天橋は下から見上げるのも美しく、渓谷にせり出した展望台が建物としても優美な印象を与えています。朝早い時間帯ですので、まだまだ人が少なく、絵になる眺めでした。
通天橋に戻って、最後に額縁状に写真を撮ります。絵画のように美しい、紅葉の時期とはまた違った感動的な風景でした。ここまでしっかりと雪が積もることは滅多にありませんので、紅葉よりも貴重な体験です。ただ、雪の日は時間勝負。ゆっくりと眺めていたい気持ちを押さえながら、次の場所へと移動しました。次回以降で、東福寺の塔頭・芬陀院の丸窓からの雪景色をご紹介します。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。