下鴨神社境内の光琳の梅が見ごろを迎えています。一方、糺の森を歩けば、木々が地面に作りだす見事な影絵も目にすることができます。
先日、雛祭りの流し雛をご紹介した下鴨神社。御手洗川に面して1本の紅梅が見ごろを迎えています。通称「光琳の梅」と呼ばれる梅の木です。光琳とは、江戸時代に活躍をした画家・尾形光琳のこと。後に「琳派」と呼ばれる装飾的な画風を得意とした一派の代表的な人物で、絵画のみならず工芸の面でも才能を発揮し、八橋蒔絵螺鈿硯箱(やつはし まきえ らでん すずりばこ)は、国宝としても知られています。
尾形光琳の絵画では「燕子花図屏風(かきつばたずびょうぶ)」と「紅白梅図屏風」がなんといっても有名です。いずれも国宝の絵画として名高く、教科書などで目にしたことのある方が多いと思います。下鴨神社の紅梅は、実は紅白梅図屏風に描かれている梅のモチーフになったとされています。
梅は楼門をくぐって右側、御手洗川にかかる朱塗りの橋「輪橋」のたもとに咲き、美しい橋とも相まって京都らしい風情も感じさせてくれます。紅白梅図屏風の紅梅と比べると、ずいぶんと花の密度が多いように感じます。時の流れなのか、あるいは光琳が目にした梅と同じものでないのかは分かりませんが、通常の紅梅よりも色に深みがあり、上に上にと伸びる様は絵に似通っている印象も受けました。神社に参拝する人も、満開の梅に引き寄せられて、写真を撮って楽しんでいる方が多いです。見頃はしばらく続きますので、是非ご覧になってみて下さい。
一方、下鴨神社の糺の森では、木々が葉を落としている冬の間だけ楽しめる「影絵」が見事です。森には背の高い落葉樹が多いため、その木の形が非常に芸術的な線を描いて地面に映っているのです。個人的におススメの場所は、河合神社の西側のアスファルトの部分。まるで広いキャンバスのようで、辺りの道にもとても綺麗に「芸術作品」が描かれています。じきに木々が芽吹いて葉に覆われると、こうした風景は見られなくなってきますので、冬から早春の時期ならではの楽しみ方です。晴れた日には、下鴨神社の糺の森も散歩してみて下さい。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。