南禅寺の境内から北へ10分ほど歩くと、疏水に沿って銀閣寺まで続く哲学の道があり、桜が空を覆う美しい散策路をたくさんの観光客が行き交っています。
本日(6日)は、「ことぶら」さんで初めて散策を開催させて頂きました。ご参加頂きましてありがとうございました。疏水沿いの桜は開花がやや遅く、まだまだ満開の桜を楽しむことができました。5日夜の雨もあり散っている桜もありますが、全体的には「散り初め」の段階。強い風が吹くと桜の花びらが舞い、この日の冷たい気候とも相まって、まさに吹雪のようでした。7日からは再び暖かさが戻り、桜の主役は遅咲きの八重紅しだれ桜へと移っていきます。
さて、南禅寺から人の流れに乗って北へと歩くと、永観堂の前を経て山沿いに流れる疏水に沿って続く「哲学の道」の桜並木へと行きつきます。哲学の道は、若王子橋から銀閣寺橋までの散策路で、哲学者の西田幾多郎が思索にふけりながら散歩していたことから、その弟子も歩くようになり、やがて「哲学の道」と呼ばれるようになりました。西田幾多郎の歌碑は道沿いにあって、碑にはこう刻まれています。「人は人 吾はわれ也 とにかくに 吾行く道を 吾は行なり」。かっこいいですね。哲学的な意味も込められているのかもしれませんが、私の好きな言葉です。
哲学の道の桜は北へ行くほど見事になっていきますので、楽しみながら散策をして行きましょう。途中には大豊神社の参道への分かれ道があり、神社に足を延ばせば椿が美しく咲いています。境内にある大国主社の前には可愛らしい狛ネズミの像が立ち、まるで女性のように、可愛らしい椿の飾りを付けています。この時期ならではの光景ですので、お時間に余裕のある方は立ち寄ってみて下さい。
また、哲学の道から更に山沿いに入った場所にある法然院では、7日まで春の特別公開が行われています。法然院も建物内に咲く椿がたいへん素晴らしく、椿で満たされた手水鉢の美しさは、京都でも群を抜きます。春の彩りをギュッと集めたようなその眺めは、誰もが足を止めて行く光景です。今年はもう時間がありませんが、機会があれば訪れてみて下さい。
13日までは、法然寺の南にある霊鑑寺でも特別公開が行われています。霊鑑寺は江戸時代以来の尼門跡寺院で、境内にはおよそ30種の椿が咲き誇っています。こちらも境内を入ってすぐに美しい椿の器が並んで綺麗です。苔のお庭を飾る色とりどりの椿は目を楽しませ、京都らしい風情に満ちた、しとやかな美しさがあります。きっと素敵な写真とともに思い出にも残ることでしょう。この時期の京都の旬の場所の一つです。
哲学の道は銀閣寺橋までと一般的には言われますが、疏水の流れと桜並木はさらに先へと続いています。特に銀閣寺道の桜並木は密度が非常に高く、美しさは抜群です。道の向かいには、画家の橋本関雪ゆかりの白砂村荘がありますが、実は哲学の道や銀閣寺道の桜は、関雪の夫人が関雪が有名になったお礼に植えた桜で、総称して「関雪桜」と呼ばれています。見事な桜には、見ている私も感謝したくなります。銀閣寺道の桜からは、大文字山に描かれる「大」の字も望めますので、その眺めの場所も探してみて下さい。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。