興聖寺は、宇治川の右岸にある寺で、曹洞宗の宗祖・道元が深草に開いた寺の名を受け継ぎ、江戸時代の初めに現在地に再興されました(道元が開いた興聖寺は一度廃絶しています)。再興したのは、徳川秀忠の腹心だった永井尚政です。井尚は秀忠の”近侍の三臣”の一人に数えられ、のちの老中に相当する役を務めていましたが、秀忠が亡くなり家光の時代になると政権の中央から離れ、関東の古河(下総国)から10万石の大名として淀藩に赴任しました。
尚政は、道元禅師ゆかりの興聖寺が廃れて廃れてしまったことを惜しみ、父母の供養も兼ねて新たな興聖寺を復興しました。幕府の重職を担った尚政の力か、興聖寺の本堂には伏見城の部材が使われています。廊下の縁側には血天井があり、現在は具体的な個所には白くマルが付けられて分かるようになっています。
長い参道は「琴坂」と呼ばれ、坂を流れる水の音が、美しい琴の音色にも聞こえるというところから名付けられました。実際に参道歩いてみると「なるほど」と思うほど、心地よい音が響いています。楓等の木々の緑が美しく、夏の時期でも涼しさを感じることができます。
今の時期は、境内を皐月の花が飾ります。皐月は普段の庭の景色を大変華やかに彩り、風景を変えてしまう花です。一方で見頃の見極めが難しく、ピーク(と感じられる)時に訪れることができたのはラッキーでした。境内のお庭や建物もご紹介したい話がいろいろありますが、時間の都合で今回はこの辺りで。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。