宝積寺の鬼くすべ

宝積寺 鬼くすべ
4月18日に大山崎にある宝積寺(ほうしゃくじ)で、鬼くすべが行われました。

宝積寺宝積寺は、京都と大阪の境にある天王山の山麓に建つ寺です。創建は聖武天皇の時代と伝わる古寺で、聖武天皇が皇太子だった頃に龍神から授かったという打出と小槌をおさめたところから「宝寺」とも呼ばれています。本尊の十一面観音は鎌倉時代の美しい仏さまで、迫力ある閻魔像やその眷族など貴重な仏像や寺宝を数多く伝えるお寺です。天王山は戦国時代には秀吉と光秀の天下分け目の決戦地としても知られ、宝積寺には秀吉の本陣が置かれました。境内には戦勝を記念して秀吉が建てたという三重塔も伝わっています。

宝積寺宝積寺で4月18日に行われたのが「鬼くすべ」という行事。ずいぶん前のことになってしまいましたが、記録のためにブログを書いておきます。鬼くすべは疫病退散を願う追儺(ついな)の行事で、正しくは「大厄除追儺式」といいます。疫病の象徴として鬼が登場し、その鬼を本堂内の護摩の煙によっていぶし出す(くすべる)ところから、鬼くすべと呼ばれます。

宝積寺 鬼くすべ鬼くすべは、奈良時代の慶雲3(706)年に疫病が流行った際、文武天皇が僧・行基に疫病退散の修法を命じて始められたと伝わります。宝積寺は、724年にその行基によって創建され、鬼くすべの修法が寺に伝わりました。行基は各地に寺を建てたり、橋を架けたり、ため池を造ったりと民衆のために活動をした僧です。大山崎での行基は、山崎橋を架けたりその管理寺院である山崎院も創建しています。当時は民衆への布教は禁じられていましたが、それでもなお行基は民衆に寄り添う道を選びました。やがて聖武天皇の時代になると、民の力を借りて巨大な大仏を造ることになり、民衆の支持を得ていた行基も大仏造立に携わっていきます。

宝積寺 鬼くすべ大山崎の地は、山城国と摂津国との境目にあたる交通の要衝。今でも鳥インフルエンザは海外から入って来るというイメージがあるように、当時も疫病は「外から入って来るもの」と考えられていました。そのため、国境の大山崎では度々疫病退散を願う行事が行われました。宝積寺の鬼くすべは、もともと山崎院で行われ、その後に宝積寺に移されて、疫病退散行事の一環として伝えられてきたといわれています。暖かくなり、疫病が流行りだす春の時期に疫病退散を願うのも理にかなっています。

宝積寺 鬼くすべさて、行事は14時から始まります。まず、僧侶や鬼、七福神らが一旦仁王門の外へ出て隊列を整えます。この時は門が閉じられていますが、法螺貝が吹かれ般若心経を唱和したあと、門が開かれて境内へと一行が入り、本堂へと進んで行きます。鬼は厄年の方が務め、七福神がいるのは宝積寺に大黒天や弁財天を祀るお堂があるからでしょう。

宝積寺 鬼くすべ一行はすでに参拝者でいっぱいとなっている本堂へと入っていきます。初めの儀式はお堂の扉が開けられて中の様子を見ることもできますが、やがて護摩が焚かれる段になると、お堂の扉が閉められます。この間、外からは見ることができませんので、入れるうちに中に入っておくと儀式の全容を眺めることができます。

宝積寺 鬼くすべ行事は儀式的な要素が強く、お堂の柱には75個の鏡餅が竹に挟まってぶら下がっています。鏡餅はその名の通り鏡のように鬼の姿を映し、鬼は自分の姿に驚いて逃げて行くといわれています。75は、聖武天皇が龍神から打出と小槌を授かってから75日目に即位をすることができたためと伝わります。導師によって護摩が焚かれると、煙がもうもうと上がり、密閉空間となった堂内に煙が充満して来ます。焚かれているのは檜葉(ひのきば)で、この煙が邪気を払うとされます。大きなうちわで仰がれて、堂内に煙が行きわたるようにもされています。

宝積寺 鬼くすべやがて鬼が導師の元に呼ばれてお加持が行われます。災いの象徴である鬼が煙によって改心をして、お加持を受けるということのようです。加持が終わると鬼は松明を持ち、導師が堂内奥へと移動をすると、とどめとして鬼に向かって矢を放ちます。この時使われているのは桃の弓と蓬(よもぎ)の矢で、いずれも邪気を払う力を持っているとされます。矢で堂内を追われた鬼たちは、お堂の外へ出て仁王門の方へと逃げて行きました。こうして、鬼くすべの行事は終了です。

宝積寺 鬼くすべ 餅まきお堂の外には多くの地元の方が待機していて、準備が整うと餅まきが始まります。数は十分にありますが、やはり取り合う勢いはすごいので、怪我のないようにご注意ください。鬼はいませんが、七福神がまいてくれます。私もたくさん頂きました。

宝積寺 鬼くすべ餅まきが終わって境内の雰囲気が落ち着く頃になると、鬼たちが戻ってきて自然な流れで記念撮影会となります。鬼の面は恐ろしいというよりも、どこかユーモラスな表情をしており、写真写りもなかなかです。鬼たちも気さくに応じて下さいました。また、七福神の皆様も同様に撮影に応じて頂けます。こうして終了した鬼くすべ。京都では節分の行事で鬼が登場しますが、節分以外の時期で追儺の行事があり鬼が出てくるのも珍しいでしょう。機会がありましたら、ご覧になってみて下さい。

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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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