安楽寿院は、鳥羽離宮の中に築かれた寺で、保延3(1137)年に鳥羽上皇が離宮内の御堂を寺に改めて創建しました。鳥羽天皇の陵墓を守る寺として、最盛期には関東から九州まで各地に所領を持つほど栄えましたが、南北朝の争乱の兵火によって衰退。豊臣秀吉・秀頼の時に復興しました。現在も、鳥羽天皇陵と多宝塔の美しい近衛天皇陵が寺の周りには残されています。近衛天皇陵については、以前ブログに詳しく書きました。
安楽寿院の堂内は普段は非公開ですが、境内の一部は自由に参拝をすることができ、そこに置かれているのが三尊石仏です。江戸時代に境内西側の成菩提院の跡地から掘り出されたもので、釈迦三尊・薬師三尊・阿弥陀三尊の3面があります。石仏は凝灰岩で作られているため比較的もろく、風化が進んでいますが平安時代の貴重な石仏です。
実は3面の三尊石仏のうち、最も保存状態がよい阿弥陀三尊は、安楽寿院から京都国立博物館に移され、現在は中庭に安置されています。安楽寿院に残されている釈迦三尊と薬師三尊は、仏様の顔の判別が難しいものもありますが、国立博物館の阿弥陀三尊は確かに比較的よく残っていて、どことなく可愛らしさをも感じてしまうお姿をしています。
安楽寿院に残されている釈迦三尊と薬師三尊ですが、薬師三尊の方がより摩耗が激しくなっています。これは、薬師三尊像を削って水で練り、子どもの体に塗ると湿疹が治るという信仰があったためです。凝灰岩は柔らかいのでどんどん削られてしまい、薬師如来の脇を守る日光・月光菩薩は、もはや判別さえ難しいほどです。平安時代から時を超えて伝わる石仏は、思いもよらぬ信仰も集めてきました。安楽寿院は、竹田駅から城南宮へと向かう道すがらにありますので、通る際は三尊石仏にも手を合わせてみて下さい。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。