先日、妙心寺の東林院で行われている「沙羅の花を愛でる会」を訪れてきました。
6月の京都で咲く花の一つが「沙羅の花」です。正確には「夏椿」という花で、お釈迦さまが入滅する(亡くなる)際に、白い花を咲かせて悲しみのあまり枯れてしまった「沙羅双樹」とは異なります。お釈迦様はインドの人物ですので同じ花が日本には無く、白色で椿と同じくポトリと花を落とし、さらに1日花という儚い姿から、夏椿が「沙羅双樹の花」とみなされ、平家物語の冒頭で「沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす」という一節にも影響していったと考えられています。
東林院の「沙羅の花を愛でる会」は6月15日から30日まで行われています。団体の来場も多く、時間帯によってはかなり混雑します。拝観料はお抹茶付で1600円です(お抹茶と精進料理付5950円)。今回は4年ぶりに訪れてみました。ちょうど団体が出たあとで比較的人が少なく見られましたが、この時期に高い人気を誇る場所の一つです。
かつて東林院には樹齢300年を超える立派な沙羅の木がありましたが、隣の塔頭の整備に伴って日当たりや地下水の様子が変わったことから、2002年から急激に樹勢が衰え、ついに2006年に枯死してしまいました。まさに平家物語の「無常」を感じる大事件でした。先年、残されていた枯れ木も姿を消し、往時を御存じの方からすると、少し寂しい眺めとなったかもしれません。ただ、境内には引き続き十数本の沙羅の木があり、苔庭に散る様子はこれまでと変わらず「儚さ」を感じさせてくれます。
この日の花の散り具合は、正直なところあまりよくはない印象で、梅雨に入ってから雨量が少ないことも影響をしているかもしれません(あくまで私個人の感想です)。お寺の方によると、沙羅の花は一日で散ってしまう花ですので、その日によって様子は異なるとのことでした。できれば雨上がりなど、お庭が水を含んでいる時の方がより写真映えはすると感じます。お抹茶を頂き、しみじみと花を眺めていると、クロアゲハが花の蜜を吸いにやってきて飛びまわっていました。
「沙羅の花を愛でる会」のもう一つの名物は、和尚さんのお話です。やはり話はお上手で、時折笑いを交えながら、深い話を分かりやすく伝えて下さり、また質問にも気さくに応じて下さいます。和尚さんのお話を毎年楽しみに来られている方もいることでしょう。沙羅の花を楽しむ会は残り僅かで終了ですが、東林院では1月後半の「小豆粥で初春を祝う会」や10月上旬の「梵燈のあかりに親しむ会」といった季節感のある拝観も行われています。機会がありましたら、足を延ばしてみて下さい。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。