先日、奈良国立博物館で行われている「国宝 醍醐寺のすべて」展を訪れてきました。9月15日まで開催中です。
「国宝 醍醐寺のすべて」展が行われているのは、京都国立博物館ではなく「奈良国立博物館」です。場所は近鉄奈良駅から興福寺を横目に、東へ10分程歩いた奈良公園内です。周りには、春日大社の神の使いである鹿がたくさんいて、東大寺の程近くとあって観光客も多いエリア。特に外国人が多く、鹿せんべいを売っていた方も、流暢な韓国語を使いこなしていました。
なぜ醍醐寺の展示を奈良で行うのかと、多くの方が思うことでしょう。実は醍醐寺を開いた聖宝(しょうぼう)は、若き日に東大寺で修行をしていました。その時代のエピソードなどは、以前に醍醐寺の創建について書いたブログにまとめていますので、よければご覧ください。また、聖宝が悟りへの答えを求めて分け入ったのは、奈良の吉野。聖宝が金峯山や大峯山を開くにあたって、東大寺近くの郷民が「餅飯(もちいい)」を作って随行し、開発を助援したと伝わります。この郷は現在は「もちいどの」として、奈良を代表する商店街の名前で広く知られています。このように、聖宝と奈良とは浅からぬ繋がりがあり、さらに言えば、平安末期から鎌倉初期にかけて東大寺を復興した僧・重源(ちょうげん)は醍醐寺の出身でもあります。今回、奈良で展示が行われるのはこうした歴史的背景があるのでしょう。
さて今回の展示では間近で見ることが滅多にできない、貴重な寺宝が多数展示されています。中でも、仏像は素晴らしいものを目にすることができます。上醍醐の五大堂にある「五大明王像」がそろって寺外で展示されるのは今回が初めて。通常であれば険しい山道を上って、さらに少し遠目でしか拝むことができない仏様を、目の前で見ることができます。中でも大威徳明王像は平安時代に五大堂が作られたときの貴重な像です。
また近年は通常非公開となった、三宝院の「弥勒菩薩坐像」も必見です!快慶作のその仏様はたいへん優美で、仏像ファンの間では傑作と名高い仏像です。さらに、五重塔初重壁の絵画の一部が展示されてたり、霊宝館にある上醍醐薬師堂の本尊である薬師如来像も、日光・月光菩薩像とともに、堂々たる姿で迎えてくれます。醍醐寺の歴史や成り立ちは、歴代の住職が大切に守り伝えて来た「聖教(しょうぎょう)」と呼ばれる膨大な文書の展示によってよくわかり、改めて醍醐寺のすごさを感じました。「国宝 醍醐寺のすべて」展は、9月15日まで。今なら「なら仏像館」とあわせて1500円です。なら仏像館は9月7日までで改修工事のため休館となり、平成28年3月まで見ることができませんので、ぜひ9月7日までに行っていただくとよいかと思います。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。