高台寺は東山にあって、清水寺とともに高い人気を集めるお寺です。創建は豊臣秀吉の正妻であった北政所(きたのまんどころ)です。北政所は通称で、正確な名前は「おね」または「ねね」といい、高台寺前の石畳の道は「ねねの道」と呼ばれて観光客にも親しまれています。おね(以下、ここでは「おね」で表記を統一)が、まだ身分が低かった秀吉と結婚をしたのは14歳の時、秀吉はすでに25歳になっていました。おねは教養ある女性で、身分の低い秀吉との結婚に母は大反対。結局おねが別の家(浅野家)の養女になり、そこから嫁ぐということで決着をしました。当時としてはかなりの大恋愛で結ばれた二人でした。
その後、おねの内助の功もあり、秀吉は出世。ついには天下人となります。しかし秀吉は子の秀頼がまだ幼いうちにこの世を去ってしまいます。秀吉とおねとの間に子はいませんでしたが、家臣たちを子どもたちのようにかわいがり、おねの影響力は豊臣政権の中では大きいものがありました。出家をして「高台院」と名乗ったおねは秀吉の菩提を弔うために高台寺を創建しますが、そこに徳川家康が政治的配慮から多額の援助をし、広大な伽藍を持つ大寺院となったのです。
現在の境内には、おねの乗った御所車が天井にあしらわれた開山堂、ねねのお墓でもあり蒔絵で飾られた霊屋(おたまや)、伏見城から移された茶室の傘亭・時雨亭などが残り、広い庭園は紅葉が美しい場所としても、京都有数の観光名所となっています。人が多いお寺は、人が多いだけの魅力にあふれていて、静かな社寺も人の多い社寺もいずれも素晴らしいですね。
季節はまだ9月前半ですが、臥龍池の周りの楓は先の方が赤くなっていました。お寺の方に伺ってみると。今年はいつもより赤いが池の周りは秋の早くから色づくとのこと。しかも、赤い状態のままゆっくりと本格的な紅葉シーズンを迎えるのだそうです。なるほど、もしかすると今年の京都各地で目立つすでに赤い楓も、これはこれで平常の範囲内で、一度気になってしまうと、あちらもこちらも赤いと目についているだけなのかもしれませんね。お騒がせしていたらすいません。
高台寺さんのお庭は、時期によって現代アート的な演出もあれば、古くからの建物もあり、竹林もあり、眺めの良い場所もあり、水辺もあり、歩くたびに変化する多様な「京都らしさ」を感じられる場所です。ファンが多いのも頷けます。紅葉の時期のみならず、どの時期もおすすめのお寺ですので、何度でも足を延ばしてみてください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。