法住寺のつり雛展は数年前から行われていて、つり雛はご住職のお義母さまによって、丹精込めて作られたものだそうです。今年もまた訪れてみました。少なくとも5年連続で、個人的にもひな祭りには欠かせない場所になってきました。中は阿弥陀様以外は写真撮影もOKで、どれもが可愛らしく、一つ一つ写真を撮って帰りたいほどです。
つり雛はつるし雛とも呼ばれ、伊豆の稲取に江戸時代から伝わる風習とされています。当時は豪華な雛飾りを手に入れられるのはごく限られた人たちだけ。そこで、雛飾りの代わりに手作りで子や孫のために作ったのがこのつるし雛。布で作ったぬいぐるみを、竹ひごの輪から赤い糸で雛壇の両脇に吊るし、娘の無病息災、良縁を願う飾りです。祖母から母へ、母から子へ、子から孫へと代々作り方を伝えられていったものだそうです。
さて、それぞれの飾り物にも縁起を担ぐ意味があり、例えば、空を飛んでいるかのような「這い子人形」は、這えば立て、立てば歩めの親ごころで、子どもの健やかな成長を願うもの。「枕」は寝る子は育つところから。さるは厄が去る、ふくろうは不苦労、巾着はお金がたまるように、すずめは五穀豊饒に、花や蝶は綺麗にかわいらしくと、女の子らしいものもあります。他にも赤ちゃんや、子どもが”かごめかごめ”で遊んでいるようなものなど、様々な飾りが下げられています。
つり雛展では一般的な段々の雛飾りも見られます。京都ではお内裏様が向って右におかれることが多く、違和感を感じる方もおられるよう。これは天皇から見て左の方が位が高いことを示すもので、官職でも左大臣のほうが右大臣よりも高くなります。そのため、お雛様の左側にお内裏様は立つということです。その様子を私たちから見れば、向かって右にお内裏様、向って左にお雛様となります。ただこの習慣も明治の頃まで。西洋の文化が入ってくるにつれて、皇室でも位置が変わり、お内裏様とお雛様の位置も変わっていきました。京都では昔ながらの古風を伝えているようです。
また、雛飾り以外にも手作りの創作人形や、洋風の人形、小物も飾られています。どれも華やかで、私もいつか娘が生まれたら連れて来たいものだなと思います。毎年、行事を続けて行くのはご苦労もあるかと思いますが、今後長く続く法住寺の伝統行事となって頂きたいものですね。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。特技はお箏の演奏。