5月18日に上御霊神社の御霊祭があり、御所の北にある朔平門の前で神輿の差し上げが行われました。
5月の京都は毎週末のように祭りが続きますが、上御霊神社の御霊祭は毎年5月18日に行われるお祭りです。神幸列にはお稚児さんや牛車も出るなど立派で、神輿も3基がそろって勇壮です。5月15日には葵祭がありますが、その3日後にもこうした盛大なお祭りが行われるのも京都らしいことでしょう。
御霊祭の起源は平安時代の貞観5(863)年に神泉苑で行われた日本最初の御霊会(ごりょうえ)によると言われています。祇園祭の起こりとも言われる御霊会は6年後の貞観11年(869)年で、ほぼ同時期の発祥。貞観という元号は、東日本大震災に匹敵した「貞観津波」も起きた時代。貞観の時代には天変地異が続き、新潟での大地震、富士山の噴火、東北での大地震、隕石の落下などもありました。また、応天門の変が起こるなど政治的にも人々を不安にさせることがありました。当時、疫病や天変地異は恨みを持って亡くなった高貴な人物が怨霊となって引き起こすという信仰があり、その怨霊を鎮めるための御霊会が行われたのです。
上御霊神社は上京の氏神として、江戸時代までの御霊祭では御所の朔平門前で神輿を担ぐことが許され、天皇が神輿をご覧になっていました。実は2009年から朔平門前での神輿の差し上げが再開されるようになりました。これまで予定が合わずになかなか見ることができませんでしたが、今年はようやく目にすることができました。
神輿は小山郷、今出川口(出町地区)、末廣会(出雲路地区)の3基があり、朔平門の前で勢揃いをして盛り上がりを見せます。例年であれば門が開くとのことですが、今年は修復もあって門は閉じられたままでした。ひとしきり神輿振りを見せたあと、やがて神輿は順次門の前から戻っていきました。それぞれが威勢の良い神輿振りを見せるなかでも際立ってすごかったのが、最後の末廣会の神輿です。「えらいちゃっちゃ、えらいやっちゃ」の個性的な掛け声で、何度も何度も神輿を差し上げる姿には感動すら覚えるほど。よいものを見させていただきました。
末廣会の神輿は天皇が東京へ行かれた後の明治10年に祭りに加わった神輿会(ただし神輿本体は江戸時代中期のものだそう)。もしも天皇の前で「えらいやっちゃ」の掛け声を出していたらと妄想してみるのも面白いですね。いずれにしても御所の前で眺める神輿は格別。神輿は夕方にやってきますので、機会がありましたらご覧になってみてください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。特技はお箏の演奏。